質問です。あなたは野球選手。チーム内にはレギュラーを争うライバルがいます。ただし、あなたとライバルは、身長、体重、年齢、足の速さ、バットコントロール、飛距離、肩の強さ等々、全てが全く同じです。あなたは、ライバルには何で勝ちますか?

西武愛斗外野手(21)が今年5月に受けた質問だ。質問者は、知り合いのメンタルトレーナー。「何かを変えないと。もう2軍でやっている場合じゃない」と3年目の春に決断し、指導をお願いした。

最初に出された質問が、冒頭のものだった。答えに詰まった。正解は…

「1秒の準備を早くすること」

だった。走攻守全てにおいて、次のプレーを想定し、頭の中で準備する。「考え方、心が大事」と理解した。

西武第2球場で2軍のフリーバッティングを見る時、気を付けないといけないものがある。愛斗の打球だ。とにかく、えげつない。外野フェンス後方には防球ネットがひかれるが、その上を越えて軽々と飛んでくる。今年初めて西武担当になったが、正直、なぜ1軍に上がれないのだろうと思いながら見ていた。今季は8月の2試合のみ。3打席に立ったが、プロ初安打はお預けだった。

2軍でも、昨季の打率3割5分8厘から2割5分と下降した。「上でも、下でも、思うような結果が出ず、悔しいシーズンでした」と正直に振り返った。だが、ただでは転ばなかった。「僕はメンタルが弱い」と自分を直視した。「違う角度から自分のプレーを見てみようと。悪くなったことで、そういう見方が出来たのはよかったと思います」と、この1年を前向きに捉えている。

来季で高卒4年目を迎える。大学に行った同学年のライバルたちは、ドラフトイヤーの4年生となる。プロに直行した矜恃、成長の違いを見せたい。「心が決まれば、絶対活躍できると思っています」と力強く言った。

自らの弱点を認め、前に進む。その時点で、愛斗は成長しているのだと思う。【西武担当 古川真弥】