開幕戦の朝、心温まる出会いに立ち会った。北海道・栗山町にある栗山天満宮で、1人の少年に声をかけられた。「すいません。ここは一般の人も中に入っていいんですか?」。同所では同町の有志による日本ハム栗山監督の出陣式が、行われていた。横浜から来ていた少年は杉山颯太郎君(12)。「栗山監督のファンです」。どうしても、伝えたいことがあった。

昨年7月、栗山監督宛に1通の手紙を送った。地元の少年野球チームに所属していたが、キャプテンに就任した直後の同1月に左膝を痛め、半年以上、野球ができなかった。最初はまともに歩くこともできず、松葉づえや車いす生活も経験。一向に良くならず、落ち込んでいた時期だった。

心を奮い立たせてくれたのは栗山監督の姿だった。「いつもプラス思考の栗山監督を見習って、運動会の時に松葉づえで50メートルを走ったら15秒で走れました」。もちろん日本ハムの試合も元気の源だった。手紙には「ケガをしてから球場に見に行けなくなったけど、いつもテレビで見て応援しています」と感謝の思いを書いて送った。

返信が届いたのは、昨季の球宴第1戦の日だった。手紙には「人は苦しいこと、うまくいかないことから頑張って、大きなこと、大切なこと、たくさんのことを学んで大きくなります」と書いてあった。元気が、わき出た。「その手紙をもらってから膝も良くなって、野球もまた、できるようになりました」。あっという間に左膝は完治した。

杉山君は春休みを利用して父進一さん(55)と旭川在住の祖父母と、開幕戦を観戦するために北海道へ来た。せっかくならばと午前中に栗山町へ足を運ぶと、まさかの出会いが待っていた。初対面した栗山監督からは「元気になった? 一緒に頑張っていこう」と声をかけられた。「ありがとうございました!」。野球を通じて、人を勇気づけることは、できる。新たなシーズンの開幕を、ワクワクしながら迎えられた。【木下大輔】