巨人一筋19年の阿部が引退した。その報に、寂しい表情を見せたのが、中日の小林正人広報(39)だ。

「さみしいというか…。今年もウチ(中日)は阿部さんに打たれていたので、驚きました。僕は大打者がいたから、存在価値がありましたから」。現役時代は左のワンポイントとして活躍。阿部との対戦成績は27打数4安打、打率1割4分8厘。通算406本塁打の強打者に1発を許したことはなく、“阿部キラー”として名をはせた。11年9月6日からの巨人3連戦(ナゴヤドーム)では3戦連続して阿部とだけ対決。左飛、空振り三振、二ゴロに打ち取った。小林広報の勲章の1つだ。

グラウンドで対決してきた2人が言葉を交わしたのは、小林広報が現役を引退してから。プロ野球コンベンションに新米広報として参加してあいさつしたのが初めてだったという。

「現役時代に接点があると、相手をいい人と思ってしまうこともある。逆に僕の性格なども見抜かれるかもしれない。あくまでも敵でした。阿部さんは先輩でしたが、現役の時は、呼び捨てにしていました」

かつては他球団の選手と同じベンチに入るのは球宴だけ。平成を迎えると、日米野球、日韓野球などを経て、侍ジャパンが誕生。球団を超えて選手同士が同じベクトルを向く機会が増えた。

小林広報は、現役293試合全てをリリーフ登板で終えた。場面や対戦相手も固定されるポジション。阿部引退が引き出した現役時代の姿に、昭和のプロ野球のにおいを感じた。【中日担当=伊東大介】