正直、ベルギー生まれとは知らなかった。オリックスからトレードで阪神に加入した小林慶祐投手(27)が8月29日、兵庫・西宮市内の球団施設で入団会見に臨んだ。冒頭で同席した谷本球団副社長兼本部長が「ベルギー生まれで2歳のころまでベルギーにいたということなので、海外経験もあります」と紹介した。

2年前に1シーズン、オリックスを担当した。イジられキャラだった小林は、いつもニコニコしているチームの人気者だった。担当歴が浅い記者にも顔を合わせれば「今日は僕の取材ですか?」と冗談めかして笑う。申し訳ないことに苦笑いで通り過ぎることがほとんどだった。1度だけキャンプの疲労回復法を聞いて「出来るだけ部屋では立たないことです」と真顔で言われて笑った。

笑顔が似合う小林は、不屈の男として知られる。ルーキーだった17年9月30日のソフトバンク戦(京セラドーム大阪)で打球が顔面を直撃。マウンド付近に倒れ込んだ。グラウンドに入った救急車で搬送されて病院に向かい、右まぶた上の打撲による裂傷と診断され患部を8針縫った。

それから1カ月もたたない10月のみやざきフェニックス・リーグで実戦復帰。恐怖心に打ち勝ってマウンドに戻ってきた。長身から投げ降ろす150キロ超の直球とフォーク。そして強心臓が最大の武器。入団会見では「どんな形であれ、全力プレーでチームの勝利に貢献したい」とアピールした。過密日程が続く今シーズン終盤。チャンスは必ず来る。新天地で開花してほしい。【桝井聡】