ロッテ石川歩投手(32)が5月に発したひと言が、知らぬ間に地元富山を“熱く”していた。球団SNS上での言葉だった。「辻わくわくランドです」

Q&A企画で「富山のおすすめスポットは?」と聞かれての回答だった。ファンを「???」と困惑させた辻わくわくランドは、石川の故郷、魚津市にある温浴施設だ。球界きってのサウナ好きは「整いますよ」とサウナ用語を使い、地元愛を発信した。

愛には愛を-。当時のネット記事を見た同店の総責任者・阿川直樹さん(50)がすぐに人知れず動いた。95度だったサウナの基本室温を100度に改造した。維持費は少し増えるが、それでも上げた。「シーズンオフに魚津に帰っていらしたときに、喜んでいただければと思いまして」。

この展開にワクワクし、記者も聖地巡礼に赴いた。開店は朝9時。近所の人がマイおふろ道具を持参し集まってくる。「サウナに12分から15分、水風呂を2、3分。外気浴で休憩10分弱。この3セットです」。せっかくだからエースのルーティンを疑似体験した。最高103度にまで達したサウナから、一気に13度の立山連峰伏流水へイン。血流と毛穴がボワッと来て、いつもの自分でなくなり、生命力が上がった気がした。

石川がお願いをしたわけではない。店側が好意で温度を上げただけ。私も、誰かからお願いされたわけではない。興味をもって、勝手に魚津を訪れただけ。それでも、全てのきっかけは石川のひと言だった。

同じQ&A企画で、もう1つのブームが生まれた。「関東に来て恋しくなった食べ物は?」との質問に、佐々木朗希投手(19)が隠しダマを取り出した。

「酢の素という、大船渡のしょうゆ店で作られたお酢があるのですが、とっても酸っぱいです」

岩手県内でも多くは出回らない謎のご当地調味料。県内外の多くのメディアが紹介し、ちょっとしたブームに。製造・販売する水野醤油店の水野一也さん(56)は「まさか好んで使っていただけているとは」とビックリ。酢の素の電話注文は例年の10倍以上に増え、年間販売数も例年の2倍に達したという。

佐々木朗は12月の契約更改で「自身が注目されていることをどう感じるか?」との問いに「大変ですけど、注目されているからこそ自分の発言とか発信ができると思います。すごく影響力があると思うので、自覚をもって発言、発信していきたい」と口にした。

今回の2例のように、第三者も前向きになれるような「プロ野球選手の影響力」であってほしいと願う。今年のドラフト2位・中森俊介投手(18=明石商)も、郷土の兵庫・丹波篠山市への思いが強い。先輩にも負けない、素晴らしい価値を発信してほしい。【ロッテ担当=金子真仁】