ボフッ! バフッ! 4万人をのみ込んだ伝統の一戦の興奮冷めやらぬ、試合後の甲子園に謎の発射音が響いた。右翼ポール際の大砲のようなマシンから、ドッジボールのような球を、夕暮れの空に打ち上げていた。

球団マスコットのトラッキーが、試合のイニング間に挑戦するイベントのひとつで、中堅の位置に立ったトラッキーが大きな網を持って打ち上げられた球をキャッチする。甲子園特有の浜風などもあり、難易度は高く、成功すればいつも大歓声となる。

開幕直前の京セラドーム大阪でのオープン戦では、大砲からうまく発射されず、1メートルも飛ばなかった。ビジョンには、どうすることもできず立ち尽くすトラッキーのアップに「残念」と大きな文字が出たこともあった。

開幕からまさかの泥沼状態で20試合消化し3勝16敗1分け。そんな状況の中、試合中に失敗して「残念」とムードを下げるわけにはいかない。せめて身体能力が高いトラッキーが勝負できる範囲に球を飛ばさないといけないという思いからか、芝生へ向かって何度も球を発射するスタッフの珍しい特訓風景を見た。

苦しい状況にも、甲子園には4万人を超えるファンが集まる。17日の敗戦後、チーム最年長の糸井嘉男外野手(40)が「勝ちに飢えている。やっぱり勝たなあかん」とナインの思いを代弁した。それはトラッキーたちマスコットも、スタッフも同じ思いだろう。阪神はホームゲームで勝っても負けても整列しファンにあいさつする。トラッキーたちも帽子を取ってあいさつする。ここまでホームは3勝7敗1分け。トラッキーたちが勝利にはしゃぎながらファンにあいさつする姿を、ここから多く見たい。【阪神担当=石橋隆雄】