これが本拠地のアドバンテージなのか。9月19日のソフトバンク-オリックス25回戦(京セラドーム大阪)でそう感じた。

5-4とソフトバンクリードの9回裏だった。ホークスは絶対的守護神のモイネロを投入。オリックスの攻撃が始まる前、京セラドーム大阪は大喝采の拍手に包まれていた。オリックスファンの作った、地鳴りのような響きだ。結果的にモイネロはセーブに失敗し、延長戦に持ち込まれた。“魔物”がいたのだろうか。

思い返せば、1カ月前の高校野球夏の甲子園で似た場面に遭遇した。

8月18日の準々決勝、大阪桐蔭-下関国際(山口)だ。昨秋の神宮大会、今春のセンバツ王者の大阪桐蔭は、1点リードで9回の守りについた。下克上を目指す下関国際の攻撃が始まると、手拍子が甲子園を包み込んだ。塁上を走者がにぎわすと、その音は一層大きくなった。下関国際は逆転に成功し、大金星。そのまま準優勝に輝いた。

試合後に大阪桐蔭の星子天真主将(3年)は「お客さんが手拍子して、のまれそうになった」。丸山一喜内野手(3年)も「拍手であったりは試合前から『絶対、鳴る』と言われていた。それに打ち勝てなかった自分たちが弱かった」と振り返っている。

話を戻す。オリックスは延長10回にサヨナラ勝ちした。10番手のコリン・レイ投手が無死一塁で太田のバントを一塁に悪送球。その時もオリックスファンの手拍子は爆音に近かった。右翼席から流れるスピーカーの応援歌も、ほぼ聞こえなかった。2死満塁のピンチに立たされ、宗に中前打を打たれた。

以前は、大声援による応援が主流だった。コロナ禍では感染拡大防止のため、手拍子になっている。インパクトに欠けるかと思えば、手拍子も手拍子で球場に“魔物”を作りだすのか。6階の記者席からそんなことを考えていた。

ソフトバンクは残り9試合で、うち4試合は本拠地で戦う。23日~26日のロッテ4連戦だ。優勝争いの大一番。勝負どころでは、いったん飲み物や食べ物を置いて、手拍子をしてみてはどうだろうか。きっと、選手たちの力になる。【ソフトバンク担当 只松憲】