組んだ両手から悔しさがにじんだ。16日に大阪・舞洲の球団施設で契約更改交渉に臨んだオリックス吉田凌投手(25)は、今季6試合の登板に終わった。昨季は18試合に登板し、日本シリーズにも6試合中5登板とフル回転した。

「今年は本当にふがいないシーズンだった。自分の思っているボールと投げているボールがなかなか一致しなかった」

紺色スーツで唇をかんだ。今季の日本シリーズはマウンドに立てず。画面越しにナインの躍動を見た。「昨年ああいう負け方をして…。やっぱり、1番悔しい思いをしたので。今年、何としてもリベンジしたかった」。言葉の重みが伝わってくる。

昨年11月27日の日本シリーズ第6戦(ほっともっと神戸)。気温が氷点下に近い延長12回2死からマウンドへ。同点の場面で代打川端に勝ち越し打を許し、敗戦投手になった。今季チームの日本一は「もちろん日本一になってくれたのはうれしい。ただ、僕は悔しい気持ちの方が大きい。あの舞台で、もう1度投げたかったですし、リベンジがしたかった」と振り返る。

来季はV3を狙う年になる。吉田凌は「プレートの踏む位置や、ボール1つ、半個をずらせれば変わってくる」と投球術に磨きをかける。修正ポイントが理解できるのは、熟練の技で生きる先輩投手がいるからだった。

「僕が目指すべき場所はやっぱりああいうところなのかなと。比嘉さんが大舞台で1発で答えを出しているところが勉強になった」

変則サイド右腕の39歳比嘉は、今季の日本シリーズで5試合に救援登板。計4回を投げ、球数52球、被安打1の無失点。4勝中3ホールドをマークする活躍で“影のMVP”だった。

吉田凌は、はっきり言う。「去年、僕がああいうことをやっておけば、チームも日本一になれた。来年は、この悔しい気持ちをしっかり持ってやっていきたいと思ってます」。決め球は緩急自在のスライダー。吉田凌は、剛腕リリーバーの中で生きる。【オリックス担当 真柴健】