入社して約10か月、阪神担当として約1カ月が過ぎた。新社会人として慣れない毎日に圧倒される中、阪神鈴木勇斗投手(22)から「ぶれない軸」の大切さを学んだ。

寒風に負けじと、鳴尾浜では阪神の新人合同自主トレが続いている。大卒2年目を迎える鈴木は自身の1年前の経験を踏まえ、後輩へアドバイスを送った。

「自分を見失わないというか、軸っていうのはしっかりと持って、ぶれない方がいいと思います」

最速152キロの力強い直球が武器の左腕。即戦力と期待されながら、昨季は1軍未登板に終わった。

「自分は(軸が)ぐらぐらだった」。さまざまな助言を受けた1年目。あらゆる意見を貪欲に取り入れようとする中、自分を見失ってしまったと振り返る。

「一番の強みが消えたというか、去年は本当になくなっていた。挑戦することも大事なんですけど、一番は基礎がしっかりないとレベルアップはできない」

それぞれがさまざまな考えを持ち、助言の内容も当然、人それぞれ。野球界に限らず、どの世界でも起こり得る「迷い」に共感した。

学びを糧に自身を見つめ直した昨年末。鈴木は今季こそ、自分の強みを前面に押し出して勝負する。

「細かい制球力というのは自分は持っていない。アバウトにというか、ストライクゾーンでしっかり勝負できるようなスタイルでやっていきたい」

今年の春季キャンプは1、2軍合わせたメンバーで紅白戦を行う予定。心機一転、新たな自分を見せる絶好の機会だ。キャンプイン初日の2月1日に照準を合わせ、すでにブルペン入りを開始。グラブの上げ方や投球のバランスを見直し、フォーム修正にも着手した。アピールに向け、戦いは始まっている。

「通用するか通用しないかは1軍で投げてみないと分からない。びびらずにやっていけたらなと思います」。プロ2年目へ向かう信念が、言葉ににじんでいた。

記者も入社し、もうすぐ1年が経過する。毎日が学びの連続だが、自分自身の「芯」を大切に、虎の熱気を伝えていきたい。【阪神担当=波部俊之介】