巨人V9選手でDeNA前GMの高田繁氏(75)が祖父にあたる明大中野(東東京)・高田直人内野手(3年)の視線は、既に目指す明大野球部に向けられている。「大学野球の投手は真っすぐが速く、今の自分では振り遅れる。対応できるように振り込みたい。守備では、複数のポジションを守れるように。それにミスのない走塁をしたい」と、早くも青写真を描く。「それと…。高校生の時は見てもらえなかったけど、準備ができたら、バッティングを教えてもらいたいです」。

打撃練習する明大中野・高田
打撃練習する明大中野・高田

その言葉の先には、祖父の存在がある。幼いころ、高田は父の進さん(49)から、繁氏の現役時代のことをよく聞かされた。

「お前のおじいちゃんは、巨人がV9を決めた日本シリーズ(73年、対南海)で、最後のレフトフライを捕った人なんだよ」

高校生になると、テレビ番組で繁氏の現役時代のプレーを見る機会があった。名選手を祖父に持ち「プレッシャーはあるけど、気持ち的にはうれしい」。

現役時代173センチ、70キロ。俊足、強肩、巧打の持ち主だった繁氏に対し、孫は179センチ、84キロの左スラッガー。遺伝子を引き継ぎながら、選手としてのタイプは異なる。

明大中野・岡本良雄監督(52)は言う。「体が大きく、ツボにいくとすごいスイングをする。守備(一塁)は、家系とは別のようです」。チームは昨秋以来、公式戦、練習試合を含め合計18本塁打。うち4本が高田のバットによる。「代打で1発」の魅力を買われ、今春から「背番号13」を手にしていた。

高田繁氏(18年10月12日撮影)
高田繁氏(18年10月12日撮影)

公式戦デビューは、新型コロナウイルスの影響で延びに、延びた。休校期間中、埼玉・朝霞の自宅で1日300スイングのノルマを課し、夏の独自大会を目指した。

参考にするのは「3選手」のプレースタイルだ。「軽く打っても飛ぶ」西武中村剛也内野手(36)。「フォームがきれいな」ヤクルト村上宗隆内野手(20)。「自分にはない足の速さと守備で」元マリナーズ・イチロー外野手(46)を挙げた。

待ちに待った日は、7月19日の九段中教校戦。4回に代打で出場。初球を右前打し、チームのコールド勝ちにつなげる一打だった。チームが敗れた同28日の郁文館戦でも代打で結果を出した。

明大中野・高田直人内野手
明大中野・高田直人内野手

明大OBの繁氏。明大中野-明大で、内野手でスイッチ打者だった父。高田も同じルートを歩む。「3世代で『Meiji』のユニホームを着続けられることは、誇りに思います」。8月下旬、明大中野グラウンドで行われる3年生の引退試合。「3世代」の顔合わせが、実現するかもしれない。【玉置肇】