野太い声が響く。「お前がいい球投げないから、向こうもそうなるんや!」。眼光鋭い楽天真喜志康永ヘッドコーチ(60)が、シートノック中の選手を引き締める。「気の抜いたプレーが出てくると落ちていくのも早い。ベテラン、若手だろうと、厳しく言いながら1年間やっていきますよ」。昨季の育成総合コーチから、2年ぶりの同職。雄々しく固い決意で石井GM兼新監督を支える。

練習を見守る楽天真喜志ヘッドコーチ
練習を見守る楽天真喜志ヘッドコーチ

沖縄市出身。東芝から86年ドラフト3位で近鉄へ入団。遊撃手として仰木彬監督の下で89年のリーグ優勝に貢献した。94年の引退後は近鉄、オリックス、日本ハムでコーチを歴任。16年、梨田昌孝監督が就任する楽天へ内野守備走塁コーチとして着任した。「おふたりとも優れた勘の持ち主。データもありますが、第六感が優れているのかなと。瞬時に答えが出てことごとく当たる。自分もそうなれればなと」。

19年9月。GMとして石井氏が球団入り。同コーチは「GM時代は正直、コミュニケーションはあまりしてきませんでした。話しづらいのかなというのが正直な気持ち」と第一印象を口にする。昨年11月、参謀役として声がかかった。「『えっ? まさか』という思いでした」。自身から積極的にコミュニケーションをとり、野球観をすり合わせた。「話してみると自分の考え方をしっかりと持っている。どちらかというと、投手を中心として守りの野球をやりたいと。自分の考えと一緒。スムーズに入っていけましたね」。

新指揮官は指導歴がない。「とにかく判断にかなり迷うと思う。ただ『どうしますか?』と聞くと『うーん』となる。だから『これとこれを用意していますけどどうしますか?』と。できるだけ迷わないような聞き方をしたい」。

キャンプ初日。球場の電光掲示板に思いが寄せられた。「真喜志ヘッドには一緒に困難に立ち向かうことを共有してもらわないといけないので、頑張ってほしいと思って書きました」と指揮官からのサプライズ。同コーチは「まさか監督とは。えっ? と思ったけどやっぱりうれしかった。監督とともに苦しみながら戦っていければいいなと思いますよ」と高揚する。そのメッセージは…“真喜志ヘッド ちばりよ!!”【桑原幹久】

1日、楽天金武春季キャンプで石井一久GM兼監督はらしさ全開のメッセージをスコアボードに掲示
1日、楽天金武春季キャンプで石井一久GM兼監督はらしさ全開のメッセージをスコアボードに掲示

◆真喜志康永(まきし・やすなが)1960年(昭35)5月3日生まれ、沖縄県沖縄市出身。沖縄(現沖縄尚学)-東芝を経て86年ドラフト3位で近鉄入団。主に遊撃手としてプレーし、通算370試合、150安打、14本塁打、打率2割7厘。94年引退。翌95年からコーチとして近鉄、オリックス、日本ハムを渡り、16年から楽天在籍。今季から1軍ヘッドコーチ。172センチ、74キロ。右投げ右打ち。