田村藤夫氏(62)が中日・立浪新監督のもとでブレークが期待される高卒3年目、根尾昂内野手(21)の現状をリポートする。

4日、秋季キャンプで立浪監督からアドバイスを受ける根尾(左)
4日、秋季キャンプで立浪監督からアドバイスを受ける根尾(左)

バッティングはいつ成長曲線を描くのか。守備位置の適性はショートか外野か。スローイングの課題は克服できるのか。まじめな性格は本当にプロ向きか。地元中日に入団して3年が過ぎた。

今季はプロ初アーチが満塁本塁打となり、やはり何かをもっているのだと感じさせた。わずかながらも兆しを感じた今季から、さらに成績が求められる来季へ、根尾の可能性を確かめるべく球場に足を運んだ。

秋季練習初日に室内練習場で見たバッティングは打ち損じが明らかに減っており、「前で打つ」というテーマにしっかり取り組んでいた。翌日、晴天のナゴヤ球場でのフリー打撃でその打球を注目したが、期待が大きかった分だけ物足りなかった。

ミスショットが目立つ。屋内でできていたものが、外のフリー打撃では精度が落ちる。コーチ陣がこぞって見つめる中、力みが出ているのだろう。遠くへ飛ばそう、いい打球を打たなければという気負いだ。打球方向を目で追うことで、フォームがずれてくる。

石川昂と交互に打っていた。あまり細かいことを気にしない、おおらかそうに見える石川昂が気持ちよく打球を飛ばすのも、根尾にはプレッシャーになるのかもしれない。「生真面目な根尾らしいな」と思う半面、周囲の期待に応えようという思考から、もっとシンプルに、ひたすら自分のことだけ考えて没頭してもいいと感じる。

21年5月4日、プロ1号が満塁本塁打。何かもってることを感じさせる根尾
21年5月4日、プロ1号が満塁本塁打。何かもってることを感じさせる根尾

大阪桐蔭で二刀流を難なくこなして全国制覇を達成。運動能力、野球センス、人気は誰しもが認めるところだ。強肩、俊足、強打。それは高校野球ではいかんなく発揮されたが、プロでは当然のことではあるが壁にぶつかっている。

まずもっとも通用すると思われた俊足はプロでも何の遜色もない。これは1軍でも武器になる。強肩。素晴らしい送球を見せるが、内野手としては安定しない課題がある。強肩重視という観点から左翼、右翼も守っている。このやり方もひとつの生かし方だ。

つまり、ショートとしての守備力、そして肝心のバッティング、この2点が大きい。ただし、高卒の野手ですんなりプロの投手に対応できる素材などめったにいない。同じ中日のショートとして高卒ドラフト1位に立浪監督がいるが、あくまでも立浪監督は別格中の別格だ。

ごくフラットな視線で見た時、根尾の素質をもってしても1、2年目に多くを求めるのは過大評価だったと感じる。3年目に若干の光が差し込んできたのなら、4年目こそが正念場と言える。

努力を怠らない根尾の姿勢はよく知っている。自分の立場も楽観せずに理解しているだろう。焦りを持ってバットを振っているはずだ。プロである以上、人の目を気にするなとは言いづらい。それでも、自分のプロ生活だ。コーチと向き合い、脇目も振らず夢中でバットを振ってほしい。(日刊スポーツ評論家)

(この項おわり)