<全国高校野球選手権:聖光学院3-2横浜>◇14日◇2回戦

横浜対聖光学院 力投する聖光学院先発の佐山(撮影・岩下翔太)
横浜対聖光学院 力投する聖光学院先発の佐山(撮影・岩下翔太)

球速140キロを超える投手は今大会、50人以上になる。多少の速さでは通用しない。聖光学院の佐山未来投手(3年)は、横浜を5安打2失点に抑え、3回戦に進出した。自らの好投をこう分析した。「初回は少し不安定なところがあったんですけど、2回からは変化球も真っすぐも低めに集めることができたのがよかったんだと思います」。この日の最速は140キロ。そこに90キロ台のカーブを織り交ぜた。

緩い球を投げるのは勇気がいるという。これが生きれば面白い。66回大会(1984年)で最速106キロの投手が3回戦に勝ち上がったことを記憶している。法政一(現法政)の岡野憲優投手だ。2回戦で優勝候補の上尾と対戦し、9回を被安打8、3失点に抑えて勝利した。岡野は「僕だって目いっぱい投げれば、120キロは出ます。でもこの方が投げていて面白い。コーナーさえつけば、打たれません」。こう言って会心の笑みを見せた。

得意のスローボールは71キロだった。速球106キロとの差が35キロあったサブマリン投手。スピード不足を指摘され、下手投げに変えてつかんだ甲子園だった。1回戦では境と対戦し、延長10回を被安打4の無失点。自軍唯一の安打が本塁打となってサヨナラ勝ちした。相手の安部伸一投手は援護なく無安打無得点が消え、勝利まで逃していた。

84年8月、境戦で力投する法政一・岡野
84年8月、境戦で力投する法政一・岡野

日刊スポーツの記者が甲子園にスピードガンを持ち込んだことがある。79年のことだ。センバツ最速は、片岡光宏投手(府中東)の136キロで、夏は牛島和彦投手(浪商)の135キロだった。甲子園のスピード表示は、04年のセンバツから始まった。プロ野球ではそれ以前から行われていたが、スポンサーを同時に表示する仕組みで、球速だけの表示にするために遅れた。

今、計測しようとすれば回転数、回転軸、変化の量までわかるという。どこまで進化するのだろう。投手たちのスピードも着実に伸びている。昨夏の140キロ超え投手は30人だった。20人以上増えた。仙台育英は登板した5人すべてが楽々とクリアした。控え投手もエースに負けない球速を計測する。

だからこそ逆に、緩いボールが有効なのかもしれない。神奈川大会で3割9分8厘の打率を誇った横浜打線が、5安打しかできなかった。佐山にしてやられた横浜の村田監督は「球速差があって手が出なかった」。こう話して、甲子園をあとにした。【米谷輝昭】