27日の3回戦・高知-専大松戸(千葉)戦の5回裏1死一塁で、専大松戸の一塁走者が捕手のけん制で刺された。タイミングはアウトだったが、逆をつかれた走者は帰塁が遅れ、タッチされそうになった右腕を抜いて、巧みにかいくぐろうとした。

走者の身のこなしはどんどんうまくなっている。WBC準決勝メキシコ戦が思い出された。二盗阻止で源田がビデオ判定のすえにアウトをもぎとったが、メキシコの走者は体をねじり、ギリギリの走塁を見せた。

WBCメキシコ戦 巧みな走塁を見せるメキシコ走者をタッチアウトにする源田(23年3月19日撮影)
WBCメキシコ戦 巧みな走塁を見せるメキシコ走者をタッチアウトにする源田(23年3月19日撮影)

近年、高校野球でもタッチプレーが際どくなっている。専大松戸の走者は一塁帰塁でのプレーだったが、センバツ大会序盤で、盗塁の場面でメキシコの走者と同じように体をねじった変則的なベースタッチがあった。通常、スライディングしながら左手でベースにさわるのだが、失速した際や、アウトのタイミングでは、意図的に野手のグラブをかわすため、左手を抜いて右手でさわりにくる。

送球との兼ね合いにもよるが、アウトのタイミングなら待ち構えてのタッチが一番確実だ。変則的なタッチプレーになった時、野手はとっさにタッチしに体ごと動いてしまう。ゆえにスキがうまれ、左手や足へのタッチが空振りになる。ポジションとしては野手が有利だということを忘れないことだ。

変則的な走塁と、対処する野手の準備。侍ジャパンのプレーが高校野球の模範となり、その影響を受けた素材が成長する。この理想的なサイクルで多くの野球ファンが素晴らしいプレーにくぎ付けになることを願う。

日本中が熱狂した国際大会と同時進行していたセンバツ大会の中に、少しずつでも侍ジャパンが学んだことを反すうする機会が芽吹くと感じる。こうやって野球は進化していくのだろうと考えた甲子園取材だった。(日刊スポーツ評論家)