ファームとアマチュア野球を重点的に取材してきた日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(64)が、12球団のドラフト戦略をチェックした。新人選手の実力はシーズンを通してのみ評価出来る。今回は指名選手の力量ではなく、あくまでも各球団の補強ポイントに沿った指名になっていたか、という視点から行った。

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阪神が下村(青学大)を一本釣りで早々に決めた決断力が際立つ。来季も投手陣を含め、戦力は充実している。武内、西舘、常広と東都のエース級がこぞって競合する中、遜色ない評価の下村を指名したところにシーズン中と同じく、岡田監督のリーダーシップがうかがえた。投手は大学生と社会人、独立リーグから4人、内野はいずれも高校生。バランスも絶妙で、先を見据えたドラフト戦略と言える。

中日は度会(わたらい=ENEOS)を1位指名として公表し、何とか打線強化を目指したかっただろうが、抽選を外したのは痛かった。ただし、草加(亜大)を抽選で引き当て、立浪監督としても1勝1敗として悪くなかったのでは。投手陣はますます層が厚くなる。

ヤクルト、巨人は先発陣を補強したい戦略を貫き、大学生、社会人の交渉権獲得にこぎつけた。両球団ともに補強ポイントは明確になっており、確実に戦力を加えた印象がある。

DeNAも横浜高時代では指名漏れした度会を、抽選で三浦監督が引き当てたのは、地元横浜としても良かったのではないか。打線は厚みがあり強力だが、さらにパンチ力のある度会が加入し、破壊力が増しそうだ。

最後に広島は常広(青学大)を抽選で引き当て、収穫の大きなドラフトだった。大学生投手を4人、高校生内野手を1人で指名終了。チームは世代交代も進み、今季も投打で力を付けてきた。新井監督が常広を引き当てた際の雄たけびは、来季へより一層弾みがつきそうだ。

田村藤夫のドラフト評価セ・リーグ
田村藤夫のドラフト評価セ・リーグ