ソフトバンク松田宣、東浜、高田、DeNA嶺井、山崎、広島九里、薮田…。「戦国東都」と称される東都大学リーグで、平成最多19度の優勝を誇る亜大。14年(平26)春に戦後初の6連覇を飾るなど、プロで活躍する選手を輩出しながら、結果を積み重ねてきた。04年から指揮を執り、リーグ優勝9度、明治神宮大会で3度日本一に導いた生田勉監督(52)の指導方針に迫った。

      ◇       ◇

亜大出身の投手は、近年プロで好成績を収めている。今季セーブ王のDeNA山崎、昨季最多勝のソフトバンク東浜、昨季最高勝率の広島薮田に九里。共通しているボールは、ツーシーム。縦変化の決め球を投球の軸に据える。

捕手出身の生田監督は「彼らに言っているのは人間の目はいつも横に動いている。バットも横に長い。横の変化には強いんです。今の世の中は横ばかり」と言って、携帯電話を取り出した。スマホの画面には横文字が並ぶ。

「人間は目を縦に動かす練習はしていない。バット1本分の太さは6・6センチで、上っ面に当たればゴロ、下っ面に当たればフライになる。特殊球として、カーブもしくはツーシームの縦系の変化球を練習しなさいと言ってます」

一塁側、三塁側合わせて計11人が同時に投げられるブルペンは、常に緊張感が漂う。防具を着けた打者を常時立たせ、外角だけではなく、内角への制球を磨かせる。投げ込みは3勤1休が基本。勝ち点制のリーグ戦は、1勝1敗なら3連戦になる。投げ込みは試合を想定。「試合前のブルペンで何球投げて肩を作るか。40球として、イニング間は5球×9回で45球。1イニング15球とすると」と計算し、1日250~300球の球数をはじき出す。プロで活躍する選手は、みんなこの練習をこなしてきた。

DeNA山崎は、直球、ツーシームの2種類の球種で、球界を代表するクローザーになった。亜大では先発完投型でリーグ通算15勝を挙げたが、生田監督はプロで生き抜く道は抑えと確信していた。当時のDeNA中畑監督と球界関係者のパーティーで会った際に「山崎をどう使うべきか」と問われて即答した。

「1イニング限定で抑えです。『何でだ』と言うから、インステップするから疲れてきたらシュート回転する。球種は2種類しかない。先発完投は無理。それ以外彼の生きる道はないです。そう言ったら『分かった、それでいく』と」

「インステップ」とは、投球時に左足を、真っすぐ本塁方向ではなく三塁側に踏み出すこと。腰を大きくひねる必要があるため体への負担も大きく、指導者に直されるケースも多い。ただ山崎には体、リストの強さがあった。「山崎のインステップは2足半。右打者には背中の後ろから来るように見えて、左打者には内角にクロスファイアで来る」と強みを変えなかった。

「2年目がダメだった。太りすぎて腰が回らなくなって、1足分インステップを直した。体が開けば短命で終わる。走れって言いました。ずっと見てたから分かるんです」。山崎は今季37セーブでタイトルを獲得した。亜大で代々受け継がれるツーシームを磨き、唯一無二の存在になった。(つづく)【前田祐輔】

14年10月、DeNA1位指名を受けた亜大・山崎(中央)は中畑監督(右)の勢いに圧倒される。左は亜大・生田監督
14年10月、DeNA1位指名を受けた亜大・山崎(中央)は中畑監督(右)の勢いに圧倒される。左は亜大・生田監督