本塁打ラッシュの夏の甲子園大会。野球評論家の西本聖氏にその原因と今大会で気になった投手を聞いた。

 -準々決勝を終えた時点で大会新記録の64本の本塁打が飛び出している

 西本氏 昨年の今井くん(作新学院、現西武)のようなずば抜けた投手がいない。いわゆる「超高校級」の選手が不在で本来の高校野球レベルの投手が多い。そこに来て打者のパワーが上がっている。目立つのが胸から肩の高さあたりのボール球を本塁打されるシーン。140キロ以上のスピードボールなら空振りかファウルになるゾーンだが、球威がないのでスタンドまで運ばれてしまう。

 -甲子園で投げている投手を見て感じることは

 西本氏 セットポジション時の姿勢。例えば右投手。左足の位置が、軸足となる右足かかとよりさらに後ろの延長線上にある。最初から開いた状態で投げる。おそらく捕手とできるだけ正対することでミットが見やすくなり、コントロールを付けたいという意図でやっているのだと思う。しかし、最初から打者にユニホームの胸のマークを見せるのはどうか。この姿勢ではどうしても投げる際にも左肩の開きが早くなってしまう。投手というのはいかに打者の嫌がることをするか。ボールを早く見せない、タイミングを取る時間を与えないといったことが大事。プロでも最近こういう投手が増えている。ちょっと気になった。

 -印象に残った投手は

 西本氏 前橋育英の皆川喬涼くん(3年)。全体的に重心が高い投手が多い中で彼は重心が低い。肘や肩甲骨周りの柔軟性があって、何より下半身の強さを感じた。下半身が安定し、そこからムチをを打つようなしなやかさがあった。最速149キロをマークしたし、将来が楽しみな投手だなと思った。