元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。51回目は「12球団戦力分析~セ・リーグ編」です。

 セ・パを2回に分け、12球団の攻撃陣、投手陣の戦力を花丸、◎、○、△、×の5段階で評価。キーマンをピックアップしてみた。

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 すでにメディアでも予想しているのだが、あらためて今季、私の順位予想は(1)広島(2)DeNA(3)阪神(4)巨人(5)ヤクルト(6)中日の順。各球団の戦力を攻撃陣、投手陣をもう少し追って見てみる。

【広島】攻撃=花丸、投手=◎

 西川、坂倉ら若手の底上げ、層の厚さともにセ・リーグでは群を抜く。外国人枠も打撃陣はエルドレッド、バティスタ、メヒア、投手はジョンソン、ジャクソン、カンポスとチーム内競争も激しい。打線はタナキクマルが脂ののった時期、昨季、終盤にけがで離脱した鈴木誠也も順調。オープン戦では、昨季15勝の薮田が4試合で14回3分の2を投げ13四死球と制球に苦しんでいたが、本調子に戻るまで待てる投手層もある。捕手の盗塁阻止率が、昨季、会沢がリーグ5位の2割6分3厘。石原が同6位の2割4分と気になる点がないわけではないが、坂倉、新人中村奨成ら若手の底上げも順調で、捕手のポジションだけで見ると流動期でどの球団でもありうるケース。総合力評価に変わりはない。

<キーマン>

 ジョンソンに注目したい。昨年はけがで6勝どまりだったが、15年14勝、16年15勝の実力者。2桁以上を見込める投手とあり、けがなくシーズンを乗り切れば強固な先発投手陣はさらに盤石となる。

【DeNA】攻撃=◎、投手=〇

 昨年からのチーム力アップがどこまでできるか。新人の東、新外国人、大和が新戦力だが、他球団も上積みがある状況を考慮すれば、現状ではマイナスもなければプラスもない。今永、浜口、ウィーランドら故障者が長引けばチーム状況は厳しくなるが、多少の出遅れですむならチームも我慢できる。井納の中継ぎ起用は好材料。昨年の日本シリーズでも試した井納の中継ぎプランだが、ラミレス監督はすでに18年を見据えていたようだ。DeNAの泣きどころは終盤のディフェンス面だった。井納-パットンー山崎康晃で終盤を逃げきることができるなら強みを出せる。連投もいける井納の7回起用はベストだと私も思っている。昨年の日本シリーズで奮闘したことでチームへの期待値は高いが、シーズンでは4位巨人とわずか2ゲーム差の3位だったことは何かが足りなかったからこそ。2~4位まで混戦のセでどこまで上積みができるか。

<キーマン>

 井納に期待したい。近年のプロ野球では7、8、9回を抑える救援陣「勝利の方程式」なくして優勝はない。井納-パットンー山崎康晃の「勝利の方程式」が確立されるか。

【阪神】攻撃=〇、投手=〇、※爆発力◎

 課題は明白で先発陣。昨年、秋山が12勝を挙げ一皮むけたが今年はどうか。メッセに続く柱がどうなるか注目で藤浪に期待がかかる。昨季67試合投げ、防御率1・51と「勝利の方程式」の一翼を担った桑原も2年連続で活躍を継続できるか。中継ぎが昨年並みにまわれば、上位進出の鍵は先発次第。オープン戦は打線が本調子でなく最下位だったが、シーズン開幕してオープン戦の結果通りにならないケースも多いので評価できない。新外国人のロサリオも日本の野球にアジャストする過程で打率は1割台だったが大砲がはまれば上積みとなる。爆発力を感じるチーム、特別に爆発力◎を付け加えておく。

<キーマン>

 藤浪。先発陣の層が薄い中、2桁勝てるポテンシャルがある右腕が輝きを取り戻せるか。中継ぎ陣は12球団トップクラス。試合を作って5回投げきれればいい。

【巨人】攻撃=〇、投手=〇、※爆発力◎

 新戦力に期待がかかる。吉川尚輝、岡本の活躍はV奪回には必須条件。坂本勇、ゲレーロ、マギーの主軸は12球団でも上位の破壊力がある。吉川尚、岡本が主軸の脇をしっかり固められるか。投手陣は上原、沢村が中継ぎで回転すればカミネロを外してヤングマンを先発に回すオプションも生まれてくる。マイコラスの穴を埋めることができるかも懸案事項のひとつ。中継ぎ陣が厚みを増せば不安要素を消すことができ、優勝も見えてくる。阪神同様、爆発力に◎。

<キーマン>

 吉川尚輝。昨年2番マギーを起用したケースもあったが、小技を使える選手ではなくベンチも打ってくれるのを待つだけだった。これでは監督としても手の打ちようもない。長年落ち着かなかった2番打者に吉川尚輝がハマれば、強攻策あり、足技での揺さぶりあり、犠打で手堅い攻めありと相手の嫌がる野球ができる。陽-吉川尚-坂本勇と1、2番でチャンスメークして主軸に回れば理想的だ。

【ヤクルト】攻撃=◎、投手=△

 セ・リーグ屈指の打線は健在。昨年はけが人続出で本領発揮とはならなかった。雄平が本調子でなさそうだが、青木、川端が戻ってきた打線は破壊力を増している感さえある。昨秋、肘の手術を受けた小川と星知弥が復帰を目指し調整中だが、2桁勝利を計算できる投手が残念ながら見当たらない。不安定な投手陣が整備されればいつでもAクラスに戻ることができる実力はある。

<キーマン>

 青木効果に期待したい。投手陣、野手陣にいい風を吹かすことができるか。侍ジャパン、メジャーでも活躍してきた百戦錬磨の男は、その存在が試合の空気を支配するオーラを持っている。一昨年、メジャー帰りの黒田が広島の街とチームを元気づけたように、青木も昨季傷ついた燕の精神的支柱として役割に注目したい。

【中日】攻撃=△、投手=△

 ヤクルト同様、10勝以上を見込めそうな投手が見当たらない。今季は数年先を見据えたチーム作りの成長段階かと思う。リーグが異なるが数年前の楽天も状況は似ている。ドラフト戦略でドラ1松井裕樹に代表されるように若手を獲得し、若手の成長とともに低迷期を脱した。本塁打王ゲレーロも抜けた。Aクラス入りには大化けする選手が次々と現れる状況だろう。

<キーマン>

 小笠原。15勝ぐらいバシッと勝ちきれば面白い。かつてはチーム打率が低くても投手力で優勝をもぎ取ってきたチーム。小笠原がエースとして一本立ちできれば、投手王国再建への光が見えてくる。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。