1月に久保康友と少し話す機会があった。阪神などで活躍した右腕。38歳のいまも現役を引退する気はなく、今月22日にはメキシカン・リーグに挑戦するため現地へ渡った。クイック・モーションの速さで知られる久保は理論派でもある。キャンプ前でもあり、何げなく制球難と戦う藤浪晋太郎について聞いてみた。どうしたらエエと思う?

久保 「気にするな」と言っても、それだけではどうしようもないですから。制球とはまったく違うことに集中するとか。そのことでそっちは気にならなくなるかもしれない。そんな感じですかね。

納得できる話だ。日常生活でも使えそうである。今は受験シーズン。試験が不安だとして、では試験会場までの道順はどうか、乗り換えをスムーズにするにはどうかとか、そんなことを考えていると試験そのものへの不安は一時的には消える。自分の大昔を思い出せばそんな感じだった。

しかし、そういうレベルのことを言う人は他にもいるはずだし、藤浪の耳にも入っているような気もする。それでも真面目な藤浪にとって簡単ではないのだろう。試行錯誤しながら、少しずつ前に、というところか。

同時に言いたいのは「藤浪の問題」だけではないということだ。この試合、福留孝介、鳥谷敬のベテラン2人は活躍したが若手が力を出せず、得点は序盤の2点だけ。オープン戦ということもあり、藤浪は4回で降りたが仮に5回まで投げて3失点だったとしても敗戦投手になっていた。

野球に「たられば」はないのだが、それでも、つい思ってしまう。もし登板ごとに「7回3失点」を続けられる先発投手がいたとしても、この日のような打線なら試合になかなか勝てないし、当然、その投手が2桁勝利をマークすることも厳しい。逆に打線がガンガン得点すれば不安定だった先発投手が立ち直るケースも多くある。

その辺り、現状、選手に苦言を呈していない指揮官・矢野燿大も虎番キャップたちの取材にチラリと口にしていたようだ。

矢野 孝介も打撃だけじゃなく、走ること、守備のこともしっかりやっているのは俺らは見ていて分かる。だから、そこに(若手が)どう挑戦状をたたきつけられるかというものが俺としてはもっとほしかったのはあるけどね。孝介もそうやし、トリ(鳥谷)もそうやし。

野球は投手、打線がかみ合って勝っていくもの。制球に不安を持つ藤浪をしっかり援護できない打線という部分もある。この日に限らず問題は常に総合的なものだと思う。(敬称略)

外野芝生でDeNA久保(左)と会話する藤浪(2014年8月2日撮影)
外野芝生でDeNA久保(左)と会話する藤浪(2014年8月2日撮影)