フェニックス・リーグは16日は予備日となった。日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(61)は、フェニックス・リーグで見た中日19年ドラフト1位・根尾昂(20=大阪桐蔭)の現状を踏まえて、守備位置についての考えを示す。


このフェニックス・リーグを取材するにあたって、私はテーマをひとつ持っていた。根尾の現状を見て、ショートか外野か、自分なりに分析することだった。

私は外野で競争した方がいいのではないかと感じた。宮崎で2試合、ショートに入った根尾を見た。15日の巨人戦ではセンター前に抜けそうな打球に素晴らしい反応を見せ、飛び込んで好捕。すぐに起き上がって矢のような送球でアウトにしている。俊敏で肩の強いショートの動きだった。

対して、これは1年目からの課題だったスローイングの不安定さはフェニックス・リーグでも解消されていなかった。試合前のノックから見ていたが、高めに抜けたり、指にかかり過ぎて暴投になったり、まだ時間はかかるのかなと感じた。

正面のゴロでバウンドが合わないシーンもあった。15日の巨人戦で、同席していた各球団の編成担当から、前進して捕球すべき遊ゴロが飛んだ直後に「危ない!」と複数の声が漏れた。ゴロは上がりきったところ、もしくはショートバウンドが捕球しやすいのだが、根尾はそれに合わせるのがまだ不得意のように映る。

プロ2年目の冬を迎えようとしている。判断するには時期尚早という見方もあるだろうが、私は成長の跡が感じられる打撃をさらに進化させるには、外野手での定位置争いに専念した方がいいと感じる。あの俊足と強肩を武器にすれば、広大な守備範囲をカバーできる。外野守備なら、ショートほど神経を使わずに済む。それだけ打撃に力を注げる。

ここ数年の高卒野手で打撃、走塁、守備の総合力で考えた時に、根尾の評価はトップクラス。あくまで高校時代の評価だが、その素材を生かすことは、プロ球界としても大切な役目だと感じる。確かに高卒ショートという夢は大きい。巨人坂本のように申し分ないショートに成長したなら、ショート根尾を見たいと誰もが思うだろう。

そんな期待を抱かせる素質を備えるだけに、なかなか判断は下しにくいと想像できる。私は昨年限りで中日を退団しているので、あくまでも1人の評論家としての考えだが、これから1軍で打席を経験するにつれ、根尾のバッティングのレベルが上がっていくと感じる。

13日のDeNA戦では、先発坂本の141キロのインコースぎりぎりの厳しいコースを右翼場外へ運んだ。昨年までなら、あのコースは打ってもファウルだったと思う。あのコースの145キロ以上を打てるようになれば、根尾のバッティングは大きく進化したと言える。そして、それはそう遠くないところまで来ていると、私は宮崎で強く感じた。

打撃で魅了し、外野で縦横無尽に走り、強肩をいかんなく発揮する根尾もまた、高校野球ファン、プロ野球ファンにとってぜひ見てほしい光景だ。(日刊スポーツ評論家)