<ウエスタンリーグ:中日6-7広島>◇14日◇ナゴヤ球場

広島の高卒5年目、ショート・小園海斗(23=報徳学園)に注目した。

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フェニックスリーグ以外では、ウエスタン・リーグを見る機会はめったにない。それだけに13日の試合も同じだったが、新鮮な気持ちで見入ることができた。

中でも自然と目が行くのが広島の小園だった。根尾に取材した際にも小園の名前が出た。高卒5年目で、お互いにドラフト1位。それも同じショートとしてプロに入っている。いいライバルだなと、根尾の言葉を聞きながら思った。

小園はショートで奮闘している。21年は113試合、昨年は127試合。ほぼショートのレギュラーを奪ったかに思えたが、今はこうしてファームで汗にまみれている。恐らく、焦りや悔しさもあるだろう。

順風満帆ではない中で、どういうプレーをするのか、そこは冷静に見させてもらった。まず、バッティングでは内容も悪くないと感じた。第1打席は左投手の遅球にタイミングを狂わされ、真ん中外寄りのスライダーをスイングするも、バットの先で強烈なスピンがかかる三ゴロ。屈辱的な打ち取られ方だ。

では第2打席でどう対応するのかと見ていた。初球インコースのスライダーがボール。2球目、第1打席で打ち取られたコースへのスライダーを、狙っていたかのようにしっかりとらえてセンターへの犠飛。確実に打点を挙げた。

第3打席は真っすぐにバットが出たが、相手投手の特長である遅球に対応しきれずに二ゴロ。第4打席はカウント1-0から、外寄りのカットボールを中前打。一塁に走者がおり、ランエンドヒットか、ヒットエンドランか、判断がつかなかったが、ミートの確実性は高かった。

4打席の内容は、タイミングを狂わされた部分はあるが、凡退した次の打席で修正して打席に入っている。そして、同じ失敗を繰り返さない。反省、準備して打席に入っていることは好感が持てた。打撃内容は悪くない。

守備の方でも、準備の良さと集中力の高さが印象に残った。中前に抜ける打球にちゅうちょなく飛び込み、三遊間寄りの打球にも食らいつく。跳ねた打球にもあきらめずに下からグラブを出して何とかしようとしていた。

ハーフバウンドの難しい打球には、打球に合わせながらもしっかり体で止めに行く。前にこぼせばアウトにできるチャンスはあったが、やや斜め方向にこぼれたためアウトにはできなかったが、その状況ではでき得る対応をしっかり取っていた。

ピッチングに合わせてしっかり捕球体勢を取り、スイングに合わせてポンと軽く動き、1歩目を素早く、左右どちらに打球が飛んでも動けるように、よく集中していた。

こうして、ひとつずつ評論していくと、ほぼ何も言うことはないな、と気づいた。意図的に長所ばかりを探しているわけでもなく、ひとつひとつの動きを追っていくなかで、小園の動きはベストを尽くしていると感じた。

これで1軍から呼ばれないのは、上本、田中、矢野などの充実もあり、競争も激しいからだろう。新井新監督になり、首脳陣が代われば昨年までの成績は参考にしか過ぎなくなる。

小園はこの試合のように、しっかりやれることを継続するしかない。チャンスを与えられるかは、チーム事情にもよる。そこまで考えても選手にはどうすることもできない。

小園のこの試合での集中力から感じるのは、自分ができることだけに集中し、ベストを尽くしている、ということだ。ピンチでピッチャーに歩み寄り声をかける。1球ずつ機敏に動く。私の目には、試合に気持ちが入っているショート小園に映った。

チャンスをつかむまで、そしてチャンスが巡り1軍に昇格した後もずっと、この日と同じ姿勢を保ち続けてほしい。(日刊スポーツ評論家)