野球を「研究」して打倒私立を目指す。

厚木(神奈川)は毎年約100人の国公立大合格者を出し、さらに文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定される進学校。SSHとは先進的な理数教育を実施し、文部科学省から物品購入のための資金援助がある制度だ。

厚木高の岸主将(撮影・星夏穂)
厚木高の岸主将(撮影・星夏穂)

そんな同校野球部では、SSHならではの最新機器を使って技術向上に励んでいる。内野手の岸優希主将(2年)は「いろんな道具を使って研究できるのが楽しい」と笑顔で話す。昨年から力を入れて取り組んでいるのは、走塁の速度を上げることだ。

光電管の測定器(撮影・星夏穂)
光電管の測定器(撮影・星夏穂)

そこで使用するのは、100分の1秒まで正確に測定できる「光電管」。スタートが表示される装置はマウンド近くに置く。3秒前からカウントダウンされ、緑の表示が出たらスタートの合図。しかし「1」の表示が出てから、緑の表示が出るまでの時間はランダムで、反応速度の強化にもつながる。

光電管を使った走塁測定(撮影・星夏穂)
光電管を使った走塁測定(撮影・星夏穂)
光電管のカウントダウン表示、スタートの合図は緑の表示(撮影・星夏穂)
光電管のカウントダウン表示、スタートの合図は緑の表示(撮影・星夏穂)

具体的には、二塁から本塁までの速度を1人9本測定。そのデータを元に3カ月研究すると、三塁ベースを踏んでからすぐに体をまっすぐに立て直すよりも、少し内側に傾けたまま走った方が速く本塁まで到達するという結果が出た。それを踏まえて、再度計測してみるとチーム平均7・38秒だったのが、7・24秒に縮めることができた。体の使い方を意識するだけで、0・14秒もアップしたことになる。

ここから月1回のペースで測定を行い、今では6秒台で走る選手もいる。昨年から計測を担当する深田未結マネジャー(2年)は「1年間で最大0・5秒は縮まっていると思う」と話す。岸主将も「測定し続けることで選手のモチベーションアップにもつながっている」と継続の大切さを語った。

一塁走者の牽制を想定した練習も「光電管」を使って行う(撮影・星夏穂)
一塁走者の牽制を想定した練習も「光電管」を使って行う(撮影・星夏穂)

この冬は、ラプソードを用いて投手の制球力や変化球の精度を上げることを目指す。ラプソードとはピラミッド型の側面にカメラがついた測定器で、ボールの球速に加えて回転数やリリース時の角度、高さまで同時に測ることができる。熊倉周平監督(37)は「いろいろな測り方があるので、日々試行錯誤しています」と話した。

神奈川は全国屈指の高校野球激戦区。岸主将は「強豪校に負けないように、自分たちなりにあらゆる得点方法を探っていきたい」と意気込んだ。【星夏穂】

少数のグループに分かれて計測を行う(撮影・星夏穂)
少数のグループに分かれて計測を行う(撮影・星夏穂)