このコラムで藤浪晋太郎によく触れているのは、もちろん、期待が大きいからだ。あれだけ恵まれた体があり、球速を出せる強い肩もある。それなのになぜ…とつい思ってしまう。それと同じような思いで見ているのが江越大賀だ。

俊足、強肩に加えて守備範囲も広く、守備は上等のレベル。走る姿もいかにも馬力がありそうだ。さらに長打力もある。打撃練習で見せる鋭い打球はプロでもトップクラスだろう。

まさに「未完の大器」。そう言われながら14年ドラフト3位で入団し、6年目を迎える今に至ってブレークはしていない。16年の春先に4試合連続本塁打を記録。悲願の「右の和製大砲」誕生と思わせたが、それを最後に光る場面がない。

この日の紅白戦、江越に注目していた。1安打2四球と“10割”だったが結果より内容だ。紅組の8番右翼で出ると2回、最初の打席ではフルカウントから四球を選んだ。投手は左腕の飯田優也。さらに2打席目に飯田から中前打。カウントは1ボール2ストライクだった。3打席目にもフルカウントから四球で歩いた。

すべて2ストライクと追い込まれてからの結果だ。虎党ならこの意味が分かるはず。何しろ江越と言えば失礼ながら「三振」のイメージが先行するからだ。

1年目の15年は176打席で64三振。いわゆる三振率は3割6分4厘だった。そこから16年が3割5分9厘、試合出場が減った17年は2割7分8厘に下がった。しかし18年は40打席で22三振を喫し、5割5分。さらに1安打しか記録できなかった昨年は16打席で9三振。三振率は実に5割6分3厘となった。

昨季、セ・リーグの最多三振はヤクルト村上宗隆の184。打席は593で三振率は3割1分だった。そこから考えても「江越の三振」が目立つのは言うまでもない。しかしこの日はなかった。いい感じなのか。

江越 三振しないです。成長してます。(左)手を引くことでタイミング、間をつくるようにしています。クイックモーションのときに、まだ遅れているのはありますけど。今年は最後まで1軍にいます。

駒大の先輩でもある打撃コーチ・新井良太も「よかったんじゃないですか。フォーム、タイミングの取り方を変えてよくなっています」と話す。期待していいのか。本当に江越が活躍できるのなら外野手争いはますます面白くなる。(敬称略)

紅白戦 3回表紅組2死一塁、二盗を決める江越(撮影・前田充)
紅白戦 3回表紅組2死一塁、二盗を決める江越(撮影・前田充)