ピンポン。朝から呼び鈴が鳴る。子どもたちはよくネットでモノを買う。しょっちゅう頼んだら配達する人に迷惑やん。文句を言うが聞かない。またか。すみませんね。ドアを明けると自分宛てだった。

何も注文してないけどな。送り主を見ると阪神のよく知る人物からだ。封を開けると赤いパンツが入っていた。何事か。そう思っていると球団がメールで「矢野燿大監督勝負パンツ」発売を知らせてきた。これがそれか。送ってきたのか。

球団職員からパンツをもらう。これは“癒着”か。いや違う。狙いは分かっている。実物を送るからネタにしろ、ということだ。宣伝以外の何物でもないな。これは。ブツブツ言いながら、はいてみる。フィット感がいい。そのまま試合を見る。地上波のABCテレビでも生中継があった。

赤パンツ。昨秋の阪神で話題になった。広島とAクラス争いをした終盤。験担ぎに指揮官・矢野燿大がはいていると明かした。驚いたのは10月7日だ。CSファーストシリーズでDeNAを2勝1敗で振り切り、巨人との最終決戦にコマを進めた直後だ。うれしそうな矢野と握手した。当時はコロナ禍はない。紅潮した顔で矢野は言った。

「やったった! 作戦決行ですわ! ついにユニホームの下にはいたった! 赤パン大作戦ですわ!」

説明が必要だ。縁起がいいとされる赤パンをはき続けていると明かした矢野だったが、それはユニホームに着替えるまでのこと。ユニホームの下はスライディング・パンツ、通称スラパンだ。しかし大一番のDeNA戦だけは赤いパンツをはいたという。それを「赤パン大作戦」と評した。

その昨季終盤、9月21日の広島戦で決勝2ランを放ち、DeNAとの勝負でも活躍したのが北條史也だった。練習試合好調の阪神だが目立っているのはボーア、サンズ、糸井嘉男、そして福留孝介。原口文仁も頑張っているが期待の若手はなかなかピリッとしない。ベテラン、外国人不在の試合でソフトバンク和田毅を相手に良い面が出れば、と思っていた。

そんな試合で北條が和田から2ラン。練習試合とはいえ常勝軍団に2勝1敗と勝ち越し。これは赤パン効果か。「勝負パンツを履いて僕たちと一緒に戦ってもらえたらうれしい」。指揮官がそう言うだけに虎党は購入を本格的に検討するかも。知らんけど。(敬称略)

3回裏阪神2死一塁、左越え先制2点本塁打を放つ北條史也(撮影・清水貴仁)
3回裏阪神2死一塁、左越え先制2点本塁打を放つ北條史也(撮影・清水貴仁)