「なんや。サトテル、出えへんのか」。開幕前、最後のオープン戦となった21日のオリックス戦。雨の中、京セラドーム大阪に足を運んだ虎党はこんな感じだったのではないか。

キャンプからオープン戦を通じ、その非凡さで話題を提供し続けた大物ルーキー・佐藤輝明は疲労などを考慮して、この日はお休みとなった。ミスタープロ野球・長嶋茂雄の持つOP戦本塁打記録(7本)に並ぶことはできなかったが、それでも6発を含む打撃の素晴らしさはいやというほど証明したと言える。

だが冷静になって考えるとあることに気づく。そう、佐藤輝がいなければ阪神打線は昨季までとほとんど代わり映えしていないのでは…ということだ。新加入のロハス・ジュニアが来日できておらず、FA補強はなし。そんなことを考えるヒマもないほど佐藤輝はそれこそピカピカ輝いていたのだが、その姿がなかった瞬間「おや?」と現実に戻ってしまった。

だからというわけでもないが試合は1-1の引き分け。オリックスもエース格の山岡泰輔から実戦モードの投手陣を繰り出してきたので、そう簡単には得点できなかったかもしれない。しかしこの3連戦、阪神は3点、2点、そしてこの日の1点と尻すぼみ気味。佐藤輝も京セラドーム大阪で快音は出ていない。

開幕して佐藤輝がこれまでのように働けるかどうかは正直、分からない。OP戦では厳しい内角攻めも見受けられなかったし、本番で調整ではなく本気で勝ちに来る投手にどう対応するかはこれからだろう。

もし「プロの投手に対応するにはもう少し慣れが必要」と判断されて、まあ、それが普通なのだが、戦力になれなかった場合を想像すると打線はどうなると思ったりする。

「投手、野手も含めて全体のレベルが上がっているというのはウチとして強みの部分」。OP戦中、指揮官・矢野燿大が発していた言葉だ。実際、そうだろう。主砲・大山悠輔を中心にレギュラー格が経験を積み、全体的にレベルアップしているのは間違いない。マルテ、サンズも元気だ。

顔ぶれが同じでもそれぞれがしっかり成長していれば問題はない。佐藤輝抜きの打線でも変化したことになる。“OP戦優勝”と最高の発進だ。「それでもなあ…」と頭をよぎる漠然とした不安が取り越し苦労に終わればいいのだが。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)