無念の引き分けだ。「M3」としたヤクルトは今季ここまで598得点をたたき出している。これは12球団最多だ。強力な得点力を持つチームを、しかし、阪神は2試合連続無得点に抑え込んだ。ヤクルトからすれば2試合連続で得点できなかったのは今季初だ。

阪神対ヤクルト ヤクルトと引き分け、頭を下げる矢野監督(左から2人目)ら阪神ナイン(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト ヤクルトと引き分け、頭を下げる矢野監督(左から2人目)ら阪神ナイン(撮影・上田博志)

言うまでもなく投手陣が2試合続けて渾身(こんしん)の投球をした結果だ。前日はそれに奮起した打線が11得点を奪ったがこの日は無得点。くしくも前日、「大勝の翌日は『昨日の2、3点置いとけよ』という展開になりがち…」と書いたが、その通りになってしまった。

これでヤクルト戦は25試合すべてを消化し、13勝8敗4分け。阪神の5つ勝ち越しだ。現状、中日と並んで最多の貯金をつくらせてもらった球団となる。なにしろ今季の開幕カードで3連勝した相手なのだ。

そのヤクルトに優勝をさらわれるのか。そう思えば、仕方のないことだが、なんとも複雑な気分になる。この大一番の2試合だけ見ても阪神の1勝1分け。これで追い込まれるのか…とこれは愚痴かもしれない。

そんな複雑な気持ちは試合中も感じた。指揮官・矢野燿大は必死で戦っている。それはよく分かるのだ。だけど、あえて言わせてもらえば中途半端さを感じてしまった。多くの人が俎上(そじょう)に上げるであろう、5回の攻撃だ。

阪神対ヤクルト 5回裏阪神無死一、二塁、右飛に倒れる小野寺(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 5回裏阪神無死一、二塁、右飛に倒れる小野寺(撮影・上田博志)

小野寺暖をどういう意図でスタメン起用しているのか、ということだ。せんえつながらこのコラムでも何度か書いたが、現状、小野寺は器用なタイプの打者ではない。犠打できない場面もあった。

だからこそベンチもバントはためらったのだろう。それは分かる。しかしバスターとは…。それなら普通に打たせればと思ってしまった。つないでも打順は8番の坂本誠志郎、9番ガンケル。もちろん併殺はこわい。しかし、それを覚悟して「思い切っていけ」という場面だろうし、そう思えないのならスタメンで使うのはどうなのか。

もちろん結果論である。成功していれば、「奇策!」となっただろう。それでも失敗すれば誰にとっても後悔の残る策…と思ってしまうのがつらい。もっとも苦い思いをしているのは矢野だろう。「自分自身が受け止めてやっていきます」という言葉からそれを強く感じた。最後まであがくのは当然。同時に思い切って戦ってほしいのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)