宜野座キャンプ、第4クール初日。中盤にさしかかり、実戦も予定されておらず、まったりしてくる時期だ。そんな中、打棒で目立ったのが江越大賀だ。

走力、強肩など外野手としてチームでも1、2を誇る身体能力を持っている。だがキャンプで話題になることもあるもののシーズンで結果は出ない。2年目の16年に4試合連発したことが記憶に残るが年を追うごとにチャンスが少なくなり、ここ2年は1安打も打っていない。

代走・代打要員として1軍にはいるものの、不完全燃焼な現役生活なのは間違いないだろう。しかしこのキャンプでは打撃改造などを感じさせ、8年目の遅咲きを目指している。

そんな江越について、グラウンドに視線を向けていた緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が思わぬことを口にした。「カネのときも、矢野になってからも言ってたんですよ。『使わんならくれ』ってね」-。

3連覇を果たすなど黄金時代をもたらした15~19年の広島監督時代、江越に注目していた。監督が同学年の金本知憲、矢野燿大と続いたこともあり、トレードを画策していたという。

「足が速い、瞬発力があるということはスイングスピードも上げられるし、パンチ力も出る。球団を通して話をしてもらったけど『出せない』という答えでした」。当時の事情を緒方は明かした。

裏を返せば阪神サイドも江越の潜在能力に期待し、ここまで来ているということだ。確かに江越が使えれば一気に外野の層は厚くなるし、競争が激化する。並んで特打していた大山悠輔と比べても打球に遜色はない。いきなり右の中心打者になる可能性すらある。しかし、ここまで7年でほとんど結果が出ない選手が大化けすることが本当にあるのだろうか。

「投手と違って野手は時間がかかりますからね。遅咲きの野手は、結構、いますよ」。そういう緒方自身もケガの影響があったとはいえ、本格的にレギュラーをつかんだのは9年目のことだった。

そして緒方の中にはあるイメージがある。「去年のヤクルト塩見(泰隆)みたいになれれば、ね」。28歳のシーズンにブレークし、チームに力をもたらした塩見も遅咲きの部類だろう。力感あふれる江越がそんな遅咲きの面々に仲間入りすることができれば、これは確かに面白い。(敬称略)

シート打撃練習で岩貞から中越え3点本塁打を放った阪神江越(撮影・加藤哉)
シート打撃練習で岩貞から中越え3点本塁打を放った阪神江越(撮影・加藤哉)