今季最多の19安打13得点で阪神が巨人に圧勝したゲーム。0点負けを喫した前日の屈辱を晴らし、虎党は大喜びだが、その陰で両軍に“懲罰交代”が出る異例の展開にもなった。

巨人のそれは簡単で誰の目にも分かるものだ。2回に近本光司のゴロを中田翔がはじいてしまう。ここで敵将・原辰徳はベンチを出ると先発メルセデスとの“ダブルスイッチ”で中田をベンチに下げ、一塁に増田陸を入れたのだ。

反対に阪神のそれは分かりにくかった。対象になったのはこの日、1軍に復帰してきたマルテである。1、2回といきなり2打席連続適時打。序盤で試合を決める原動力となったマルテ。しかし同時に守備面と走塁面で首をひねるプレーを見せてしまう。

まず6点リードの3回表だ。先頭・中山礼都の当たりはマルテの左を抜けていく右前打になった。しかし、この日、コロナ禍で離脱した大山悠輔なら捕っていたかも…と思わせるような当たりだった。

さらに2死一塁になって八百板卓丸の当たりを反応できずに失策を記録。これで一、三塁にしてしまう。ここで打席に丸佳浩を迎えるイヤな展開だったがここは西勇輝がしのいだ。

守備のミスだけなら仕方がない部分もある。しかし走塁面でも驚かせてしまった。4回の第3打席で遊ゴロを放ったマルテはほとんど歩くように一塁へ向かった。観衆がざわめくほどの速度である。アウトなのは間違いないが、これは矢野がもっとも嫌がるプレーだ。

その直後の5回表から一塁は北條史也に代わった。点差もついたし、復帰直後だし、休ませたのかとみていたが違った。試合後の指揮官・矢野燿大が不満を隠さなかったのである。

「う~ん、よう分からん、オレも。本人の状態なのか。やっぱり打つだけじゃないのでね、野球は。最低限走るってこともできないと試合の中で使うことはできないという判断の中で代えました」。そう話し、懲罰交代であることを明らかにした。その本気度を示すためか、一塁に糸原健斗を入れる異例の起用も見せたのだ。

そうは言ってもマルテの存在は大きいはず。大山不在の現状では起用しないわけにはいかないだろう。そのあたりをどう引き締めながら戦っていくのか。大山が抜けた緊急事態の今こそマネジメントが重要になる。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 4回裏阪神2死、マルテは遊ゴロに倒れベンチへ引き揚げる(撮影・上山淳一)
阪神対巨人 4回裏阪神2死、マルテは遊ゴロに倒れベンチへ引き揚げる(撮影・上山淳一)