正念場だ。これまで何度か書いてきたが、いよいよ本当のそれだと思う。ここまで1勝10敗2分けの「借金9」と5球団の中でもっとも苦戦している広島戦である。この3連戦でこれまでのようにやられるか、それともリベンジするのか。その結果次第で今後の展開は変わってくるはずだ。

広島攻略のヒント、それはこの中日17回戦にあったと思う。守備が乱れて1点を先制される展開はイヤな流れ。それをすぐにはね返すことに成功したのは、それこそ「オレたちの野球」、つまり「超積極的野球」のたまものだろう。

1回無死満塁から佐藤輝明の2点適時打で逆転した後。1死一、三塁になって打者ロハスのときに一走・佐藤輝と三走・近本の間で重盗を敢行。貴重な3点目をあげた。こういう“足攻”が決まればチームに勢いが出るのはこれまで何度も見てきたことだ。

そこで広島戦である。広島相手に阪神はここまで得意の機動力が発揮できていない。象徴的なのが広島戦の盗塁数である。これまで13試合で4個だけ。対照的に広島を10勝1敗1分けと得意にする首位ヤクルトは広島戦でチーム別最多の17盗塁を決めている。もちろん機動力は盗塁だけではないけれど、この差が結果に影響しているのは否定できないと思う。

前回の広島戦(今月6、7日)を前に、広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)もこの点を指摘していたが結局、その2試合でも阪神に盗塁はなかった。そのあたりをチーム関係者に聞いてみた。

「内部の話なのであまり言えないけれど序盤の広島戦は試合展開が悪く、走れないことが多かった。盗塁を仕掛けにくい投手との対戦が多かったのも理由の1つ。投手によっては結果は違っていたのでは。ヤクルトとはそこが違う」。そんな説明だった。そして18日の相手は今季初先発の右腕・薮田和樹だ。この日のように1回から仕掛けてペースをつくっていけるか。そこに注目だ。

緒方は「俊足の近本らだけでなく誰でも仕掛ければいい」と話していた。実際に今季の広島戦で初盗塁を決めたのは3月29日1回戦の9回に走った佐藤輝だ。出塁できなければ話にならないし、序盤に点差がついてしまえば、そんな展開にならないのは承知の上で、「超積極的」に仕掛ける阪神打線の姿をマツダスタジアムで見たい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 1回裏阪神1死一、三塁、佐藤輝は二盗に成功する(撮影・上田博志)
阪神対中日 1回裏阪神1死一、三塁、佐藤輝は二盗に成功する(撮影・上田博志)
阪神対中日 1回裏阪神1死一、三塁、近本はダブルスチールの成功で生還する(撮影・上田博志)
阪神対中日 1回裏阪神1死一、三塁、近本はダブルスチールの成功で生還する(撮影・上田博志)