勝負弱さを感じさせる「V逸」。そんな思いがして仕方がない。優勝できないのは分かっていたけれど決まり方が悔しいのだ。東京ドームで巨人に負けてのV逸。指揮官・矢野燿大にとって4年連続のV逸だが東京ドームで巨人に負けて決まるのは1年目の19年9月15日以来だ。あのときの悔しさをバネに戦ってきたはずだが最後も同じ形になってしまった。

この日、デーゲームで首位ヤクルトが最下位中日と引き分けていた。ヤクルトが勝っていれば巨人戦の結果にかかわらず「V逸」が決まっていたところ。それが延長12回土壇場で中日が追いついたのだ。

阪神にすればここで今季得意にしている巨人を相手に踏ん張れば…。可能性はほとんどゼロに近いとはいえ、優勝のそれをなんとか残して、甲子園に戻れるところだった。

試合も佐藤輝明の1発で先制という待望の展開。先発は今季巨人相手に無失点を続けていた西勇輝だ。これはいけるか。しかし。そういうときにやられるのがな…。そんな思いの虎党も少なくなかったと思う。はたして西勇が逆転を許し、打線も追いすがったものの1点が届かなかった。

今季の阪神、これで1点差決着は42試合で19勝23敗の「借金4」だ。1点差で勝てるかどうかはチームの勝負強さを証明する。阪神は投手力がいいので、この結果はハッキリ言ってベンチの力量を物語っていると言わざるを得ない。ヤクルトは19勝12敗だ。

1点差だけではない。2点差試合も3点差のそれも、さらに4点差試合でも阪神は「借金」生活だ。「貯金」があるのは5点差以上つけた試合だけ。打線が爆発したときは楽勝だが接戦になるとなかなか取れない。そういう「勝負弱さ」のようなものが浮き彫りになってくる。

繰り返すがこの試合、勝ち負けの差は大きかった。勝っていれば3位固めはもちろん、広島に負けたDeNAにじりっと近づけたところ。残り試合が多いDeNAにすれば差を詰められるのは気持ち悪いはず。しかし負けたことで状況は一変。広島、巨人に肉薄されるところまで来た。

「(CSは)守りにいって取れるもんじゃない。奪い取るしかない。より積極的にというところは必要」。矢野は虎番記者を前にそう言ったようだ。3位に入れるかどうか。いよいよ最後の勝負どころである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 6回裏巨人1死、中田に勝ち越しの中越え本塁打を浴びる西勇(撮影・前田充)
巨人対阪神 6回裏巨人1死、中田に勝ち越しの中越え本塁打を浴びる西勇(撮影・前田充)
巨人対阪神 2回表阪神2死、先制ソロ本塁打を放つ佐藤輝(撮影・狩俣裕三)
巨人対阪神 2回表阪神2死、先制ソロ本塁打を放つ佐藤輝(撮影・狩俣裕三)