「おや?」と思ったのは4回裏だ。2番・遊撃でスタメンだった木浪聖也に代え、小幡竜平が守備に就いたのである。指揮官・岡田彰布が「競争よ」とレギュラー争いを展開している2人。途中交代はおかしくないのだが首をかしげたのはそのタイミングだ。

ここまでの実戦、岡田はこの2人のいずれかを遊撃のスタメンで使った場合、3打席回るまでは交代させていなかった。しかし、この試合、木浪は1回と2回の2度、打席に立っただけ。ひょっとして…。この交代が「決断」を示すのか。そう思ったのだ。

しかし試合後、思わぬ事態が明らかになる。囲まれた虎番キャップたちを前に岡田が左目の上を指しながらこんな話をしたからだ。

岡田 切りよったんよ。額。それだけのことや。どこかにぶつけよったみたい。血、出とるもんな。オレも(出血しているのを)見たから。何や? 言うたら、ぶつけたらしいって。

岡田は「病院に行ったよ。縫わんでもエエ、言うとった」と続けた。関係者によれば木浪自身も「全然、問題ないです」と言っている様子。まずは大事にならずにひと安心というところだろう。球界関係者なら知っているが神宮球場のネット裏は天井が低く、通路も狭い。ちょっとした弾みでぶつけることは容易に考えられる。

「それだけのこと」と交代理由について岡田が説明したのは、つまり、まだ、どちらを正遊撃手にすると決めたわけではない、ということだろう。当初は打撃面での優位さで木浪がリードしていたがここに来て小幡も調子を上げ、遜色ないところまで来ている。

「競争、競争言うてもなあ。結局は与えるもんなんや、ポジションは」。これは闘将・星野仙一がよく口にしていた言葉だ。競争の結果、誰が見ても「そら、そうよ」と思えるほどの差がつけば仕方がないが、そうでなければ、やはり起用する側が決断しなければならない。それが「与える」ということだ。

だが、そこが難しい。岡田は1軍メンバーそのものについても「京セラよ」と話し、オープン戦最終の24日からのオリックス3連戦まで熟考する構え。考えるポイントは多いが中でも遊撃手は特に難しいはず。現実的に見れば好不調によって併用せざるを得ない可能性は高いと思うが、いずれにせよ、あと2週間、熱い戦いは続く。(敬称略)

ヤクルト対阪神 7回裏ヤクルト無死、小幡は丸山の遊ゴロを軽快にさばく(撮影・上田博志)
ヤクルト対阪神 7回裏ヤクルト無死、小幡は丸山の遊ゴロを軽快にさばく(撮影・上田博志)
ヤクルト対阪神 7回裏ヤクルト無死、小幡は丸山の遊ゴロを軽快にさばく(撮影・上田博志)
ヤクルト対阪神 7回裏ヤクルト無死、小幡は丸山の遊ゴロを軽快にさばく(撮影・上田博志)