前半戦ラスト、節目の試合は悩める大砲・佐藤輝明が先制10号3ランを放っての勝利。指揮官・岡田彰布から「問題児」と言われた西純矢の好投もあり、虎党も喜ぶ首位ターンだ。

しかし両手を上げて喜べないのは相変わらず「あと1本が出ない」展開が続くからだろうか。1回から8回まで阪神の攻撃回は、すべて得点圏に走者を進めた。さらに8回以外はすべて先頭打者が出たのだ。

だが結果として11安打を放ったにもかかわらず、得点は佐藤輝の1発と西純の適時打による序盤の3点だけ。そういうとあれだが、これでは現在、波に乗っている広島あたりと対戦していればどうなっていたか分からない展開だろう。

そんな試合内容で目立ったのは“犠打攻撃”だ。特に2回。先頭・坂本誠志郎が安打で出ると8番・木浪聖也に犠打を命じ、木浪はこれをキッチリ決める。そこで9番・投手の西純が適時打を放つ流れだった。

木浪は4回にも犠打を成功。さらに6回の無死一、二塁でも犠打を狙ったものの二走が封殺され、送れなかった。それでもこの日の2つで今季15犠打。ヤクルト中村悠平を抜いてリーグ・トップとなった。

それにしても、である。プロの野手がバントで投手につなぐというのはどうなのか。プライドというとおかしいが、心理的にどう感じるのだろう。そこを木浪に聞いてみたかった。

「次が投手とか、そんなことは関係ないです。(犠打の)サインが出たら決める。それだけ。もう1つ、しっかり決めたかったな。あの失敗でまたやり直しだなと思いました」。木浪は反省しつつ、そう話した。

岡田にも同じことを聞いた。なんぼ西純でも投手の前で犠打ですか? 「お~ん。まあ、久しぶりに勝ってたからのう。あそこは堅くいかなあかんおもて」。独特の自虐ギャグを交えながら説明した。

阪神の犠打は「60」でリーグトップだが現状、5球団とそれほど大差はない。シーズン序盤は阪神が圧倒的に多い気がしたが、どこも堅い作戦を取りつつあるということか。成功していれば取り入れるのはプロとして当然かもしれない。

采配で勝つといっても走者が出なければ、そうもいかないのが野球。後半も簡単にはいかないだろうが、木浪に象徴される「自己犠牲の精神」がチームにあれば何とかなるかも…と期待を抱いている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 4回裏阪神無死一塁、木浪は送りバントを決める(撮影・上田博志)
阪神対中日 4回裏阪神無死一塁、木浪は送りバントを決める(撮影・上田博志)