カラリとした胴上げだった。指揮官復帰1年目で頂点に立った岡田彰布。優勝インタビューでは大阪人の本領発揮で笑いも取り、ひょうひょうといつもの調子。さすがである。

そんな岡田には前任の矢野燿大や金本知憲、さらに言えば03年Vの闘将・星野仙一と過去の指揮官と比べて「違う点」がある。それは自ら運転して甲子園に通っていることだ。

事故防止などの面から過去の指揮官たちは運転手付きのクルマで送迎されていた。球団側にすれば、もちろん岡田も同じようにしたいはず。だが夜の会食などの用事があるときは別にして、基本、岡田は自分でステアリングを握った。

「運転手て。そんなん、あかんよ。あかん、あかん。自分で乗らな。人がおったらモノなんか考えられるかいな! そらおまえ、1人でないとあかんよ」

甲子園から自宅まで約30分。意外に? といえば失礼だが小じゃれたSUVタイプの輸入車を駆る。往復で約1時間。その時間を岡田は“思念”に使う。好きなたばこに火を付け、じっくり考える。この試合、何がダメだったか。何が成功したのか。ブルペン陣の入れ替えはどうする。あいつはスタメンから外すしかないか。やめておくか。そんなことを考えながらクルマを走らせるのだ。

孫とまでは言えないが子どもにしては若い選手たちを率いてのシーズンだった。だがどちらかと言えば“大人扱い”しての起用、采配だったと思う。それぞれに明確な役割を与え、それを全うさせる。できなければ外し、頭を冷やさせる。その繰り返しだった。

「○○チルドレン」という言葉がある。ある監督のときに育った選手だとして、ときどき、使われる表現だ。岡田はそれが好きではないという。

「若い言うてもプロやねんで。基本、選手は稼ぐためにやっとるんよ。監督が誰やからどうとか、そんなんオレは関係ないと思ってる」。プロとして辛酸をなめ、ここまで培ってきたシビアな哲学がある。プロとしての“兵士”を勝つために起用する指揮官。それが監督のあり方、プロのあり方と信じるのだ。

「なんでこの戦力で勝たれへんねん」。昨年までの評論家時代、そう言っていた。そして監督就任。ホンマに勝てるんか-。待望論と同時に懐疑的な見方があったのも事実。岡田はそれを軽々と覆したのである。(敬称略)

阪神対巨人 リーグ優勝を決め、胴上げされる岡田監督(撮影・狩俣裕三)
阪神対巨人 リーグ優勝を決め、胴上げされる岡田監督(撮影・狩俣裕三)
阪神対巨人 リーグ優勝を決め、抱き合い喜ぶ佐藤輝(中央左)と岡田監督(撮影・狩俣裕三)
阪神対巨人 リーグ優勝を決め、抱き合い喜ぶ佐藤輝(中央左)と岡田監督(撮影・狩俣裕三)