今季初のサヨナラ勝利は押し出し四球だった。本塁打や適時打とかでカッコよく決まればいいのだろうが勝ちは勝ち。しかも好調だったバウアーを打ちあぐんだ後での勝利なのだ。
「どちらに転ぶか分からない試合を白星にできれば、後半に大きな差になってくる」。指揮官・藤川球児はそう言った。これは正しい。「あの試合が…」という日は必ずやってくる。
どうしても得点したい7、8回の終盤には2つの走塁死もあった。「なんとか得点を」というベンチの気持ちが表れた場面だ。焦りもあってのことかもしれないが勝利でそれも前向きに受け取れる。
この試合、この結果になったのは言うまでもなくブルペン陣のおかげだ。「ブルペンがチームの心臓」。球児も自身の経験から投手起用を重視し、そう言い切る。それに応え、ブルペンの奮闘は続く。
その延長にあるのが「投手を中心にした守りの野球」だろう。前監督・岡田彰布(現オーナー付顧問)の考えにも通じるものだ。それがあっての首位なのだが、意外にも今季ここまで阪神は接戦、具体的には1点差試合に弱い。この日のサヨナラ勝利でも「6勝9敗」と負け越している。
広島3連覇監督の緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が監督1年目を終えた15年オフのこと。球団幹部からある指摘をされた。「1点差負けは選手ではなく、采配をふるう監督の責任。来季はそれを肝に銘じてやってくれ」。そのシーズン、広島は71敗のうち26敗が1点差での敗戦。緒方はそこを考え抜き、翌年からの3連覇につなげた。
1点差試合に負け越しと書いたが4点差以上をつけたゲームでは11勝1敗と大きく勝ち越している。チーム得点もリーグ・トップ。ブルペン陣の奮闘は目立つが同時にここまで「打のチーム」だったと言えるかもしれない。
しかし、ここに来て状況は変化している。主に6番を打っていた前川右京が不調で2軍落ち。代わりに昇格させたヘルナンデスを三塁で起用するため、主砲の佐藤輝明を外野に回すなど苦心が続く。
当たり前だがブルペン陣だけでなく先発スタッフ、打線とすべてのバランスがそろってこそ優勝に近づく。この日、セ・リーグ3試合はすべて1点差での決着。競り合いのシーズン、何とか投打のバランスを取って戦っていくしかない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




