札幌光星が延長10回、サヨナラ勝ちで札幌啓成を下し、2年ぶりの南北海道大会進出に王手をかけた。主将の工藤直武遊撃手(3年)が2死満塁から左前適時打で、勝負を決めた。1年時にインターネットの掲示板サイトに「もやし」と書かれて発奮。一回り大きくなったキャプテンが、チームの勢いを加速させた。

 延長10回2死満塁。低めのボール球を工藤がひっぱたくと、鋭い打球が三遊間を抜けた。札幌光星は先制され、8回に追いつく苦しい流れ。最後は、頼れる主将の一振りだった。「自分で打った感じはしない。みんなに打たせてもらった」。立役者は、控えめに勝利の瞬間を振り返った。

 初起用された2年前の夏の地区予選後、インターネットの巨大掲示板サイトに、心ないコメントを書き込まれた。「あんなもやしみたいな選手、(伝統校の)北海なら試合に出られない」。直後に原因不明の右肩痛を発症、南北海道大会に出場できなかった自分にも腹が立ち「もやし」と書かれたページを携帯の待ち受け画面に設定、毎日見返して反骨心を養った。

 1日3食のほか、布団に入る直前にもどんぶり1杯の卵かけご飯を完食。プロテインを摂取しながらの、体幹トレーニングを日課にした。54キロの体重は、2年で68キロにまで増加した。「今はニンジン」と、胸を張るほど鍛え抜いた。

 5年前から恒例の主将選挙では「自分しかいない」と言い聞かせ、自らに1票を投じた。結果は現3年生32人全員一致。「工藤が主将じゃないと成り立たない」と安井流征捕手(3年)。自費で野球の戦略本を購入し、練習メニューに合坂真吾監督(39)に指示される内容のほか、新たな取り組みも加えた。

 目標は夏の甲子園初出場だ。昨秋は「高校野球弱者の戦略」の著者・田尻賢誉氏が学校を訪問、バッグやスパイクの乱れを指摘された。安井が「野球も、靴のそろえ方も、バックの並びもすべて日本一になる」といえば、工藤は「北海や東海大四を倒して有名になりたい。次はニンジンから大根になる」。収穫の夏へ、札幌光星が加速する。【中島洋尚】