これがJAPANの4番だ。今夏甲子園で4強入りした早実(西東京)のスーパー1年生・清宮幸太郎内野手が、新チーム初戦で2打席連続本塁打を放った。秋季都大会ブロック予選2回戦の東農大一戦に「3番一塁」で先発。2発を含む3打数3安打1四球5打点の大活躍で、5回コールド勝ちに導いた。来春センバツ出場の重要な資料となる大会の初陣で、不振に終わったU18(18歳以下)W杯からの成長を見せた。

 金属バットを握った清宮が、格の違いを見せつけた。2回1死三塁、甘く入った7球目のチェンジアップを逃さなかった。「打った瞬間に入ったと思った」という両翼91メートルの右翼席上段への2ランは、今夏の甲子園準々決勝・九州国際大付(福岡)戦以来となる高校通算16号。4回の第3打席も右中間スタンドへ推定120メートルの特大3ランを放った。「今までと違う結果が出てホッとした。2本目は入ると思わなくて、よく伸びたのでビックリした。やっぱり(金属バットは)飛ぶなと思いました」と笑顔を見せた。

 大舞台での経験から生まれた「余裕」が、高校公式戦初の2打席連発を呼んだ。木製バットで海外の好投手に挑んだU18W杯は、4番の重圧もあって不振に陥った。早実の新チームに合流したのは10日。わずか2日間で「(スイングが)小さくなっていたので、フォロースルーを大きくした。構えも大きくして『かかってこい』という感じ」と修正すると、インパクトの瞬間までボールがはっきり見えていた。「たくさんいい投手と対戦して、苦労して、打ち取られたから今がある。今日は余裕を持ってできたし、成長を感じました」と手応えを口にした。

 「JAPANの4番」として意地を見せたかった。結果を出すため、甲子園で2発を放った金色のバットを銀色に変えた。理由は「心機一転というのもある」と明かした。U18W杯後、学校でも「全然ダメだったよ」と同級生に漏らすほど悔しかった。代表や早実の先輩からもLINE(ライン)で励まされた。「代表に選んでいただいたプライドがある。ここで全然打てないようじゃ、示しがつかない。日の丸を背負っていたことが薄くなってしまう。結果が出て満足というか、いいスタートが切れたと思います」。不振脱出と来春センバツへ向けた最高の1歩を、素直に喜んだ。

 誰よりも長い夏を過ごし、挫折も味わった。和泉実監督(53)は「経験があるし、日本の4番としてやってきたわけだから。2人分くらい活躍してもらわないと、どうにもならない。2本出たのは成長の証し」とうなずいた。清宮も「これが100%というわけじゃない」とキッパリ。進化を証明した怪物が、秋も大暴れする。【鹿野雄太】