高校野球東東京大会では、二松学舎大付が今大会6試合で56得点の強打で、3年ぶり2度目の甲子園出場を決めた。

 マスクをかぶったまま、右手を突き上げ、大きくジャンプした。二松学舎大付の松江京捕手(3年)だ。9回2死後の打球が左翼手のグラブに入った瞬間、体全体で喜びを表し、マウンドに走った。「みんながつないでくれてうれしい。自分も絶対に打つ気でやりました」。主将でもある松江の声が弾んだ。

 2回に一挙5点を奪い、早々と流れを引き寄せた。その1点目をたたき出す右前打が松江だった。「もともとは打つチームなんです。それが焦るとボールに手を出して打てなくなって」。この日は焦りなし。全員安打の14安打して9点を奪った。エース市川睦投手(3年)はリードを背に、被安打3の1失点で完投した。

 今大会6試合で56得点。チーム打率は4割3分5厘にもなった。市原勝人監督(52)は要因をこう説明した。「市川の成長です。投手が安定して、守りに気を使わなくなった。野手は1日1000スイングしてますし、ヘッドスピードも速くなりました」。

 春の都大会は準々決勝で日大三に1-16の5回コールドで敗れた。先発の市川が押し出しあり、被本塁打もありで3回持たずの6失点。惨めなエースに、市原監督はこんなノルマを課した。「183センチあるんだから83キロまで増やせ」。球威がない。球威がないから、緩いカーブも怖くて使えない。そんな課題を克服するための指令だった。

 この日、左腕からの速球は141キロをマーク、90キロ台のカーブに、チェンジアップも生きた。3カ月ほどで体重は8キロ増えてノルマを達成、球速も6キロアップした。「制球も良くなりました。先輩の大江さん(竜聖投手=現巨人)のように強気で攻めたいです」。気持ちまで強くなった。

 松江は前夜、合宿所の市川の部屋を訪れて、こう誓い合った。「監督さんを甲子園へ連れて行こう」。仲良しバッテリーが、その言葉を実現させた。【米谷輝昭】

 ◆二松学舎大付 1948年(昭23)創立の私立校。生徒数721人(女子379人)。野球部は58年創部で、部員数は67人。主なOBは元ロッテ初芝清(現社会人野球セガサミー監督)広島鈴木誠也、巨人大江竜聖ら。甲子園出場は春5度、夏は2度目。所在地は千代田区九段南2の1の32。本城学校長。

◆Vへの足跡◆

3回戦7-4多摩大目黒

4回戦7-0青山

5回戦19-0独協

準々決勝6-1上野学園

準決勝8-1関東第一

決勝9-1東海大高輪台