15日に甲子園球場で予定されていた第99回全国高校野球選手権大会第8日は、天候状況悪化のため中止した。

 当初から予定されていた育成功労賞の表彰式は15日に甲子園球場の室内で行われた。受賞者は全49地区から選ばれた指導者49人で、代表で8人が甲子園に招待された。

 東北では昨夏限りで山形商の監督を退任した渋谷良弥氏(70)が表彰された。母校の日大山形に始まり、青森山田などで45年間にわたり監督を務めた。日大山形では計14度(春3夏11)、青森山田では計8度(春1夏7)の合計22度も甲子園に導き、16勝を挙げた。

 当時指揮を執っていた頃の日大山形のユニホームに袖を通し、表彰式に出席した後は、甲子園の人工芝部分で記念撮影に加わった。青森山田を最後に甲子園へ導いた09年夏以来、聖地の土を踏んだ渋谷氏は感慨深げだった。

 「2度と甲子園の土を踏めるとは思わなかった。感動しました。(試合の)中止はしょうがない。グラウンドに降り立てただけで十分幸せです」

 聖地に来ただけで、激闘の記憶がよみがえった。一番悔しい試合には、青森山田時代の06年夏、最大6点リードしながら、ヤンキース田中将大擁する駒大苫小牧(南北海道)に大逆転負けした3回戦を挙げた。

 「今でもはっきり覚えている。悔しい試合」

 現在は山形商の監督を退任し、小学校から高校生まで幅広く指導する毎日だ。

 「2度と甲子園に来ることができないと思うと残念ですけど、チャンスがあれば来たい。生きているうちに、白河の関を越えてくれれば」

 甲子園の空気を十分に満喫し、後ろ髪を引かれる思いで聖地を後にした。