東北(宮城1位)の杉沢龍内野手(3年)が1試合3本塁打を放ち、2年ぶり13度目の優勝に王手をかけた。

 1回裏の先頭打者弾を皮切りに、6回と8回には特大場外弾。八戸学院光星(青森1位)を9-6で退けた。今日11日の決勝では、昨秋の東北王者で6年ぶり3度目の制覇を狙う聖光学院(福島1位)と対戦。東北は過去の決勝では無敗のため、データ的には優勝確率100%だ。

 東北のリードオフマン杉沢が、優勝前祝いを予感させる特大3発を打ち上げた。高校通算本塁打数も39に伸ばし「1試合3本は生まれて初めて。1本目のあとに大振りになるのではなく、コンパクトに振り抜けたのが良かったと思う。プロになりたいので、もっと結果を出し続けないといけない」。故郷の秋田から駆けつけた両親に3つのホームランボールを手渡し満面の笑みも、慢心はみじんもない。

 2点を先制されて迎えた初回は2ボールからストライクを取りに来たスライダーを逃さず右中間に運んだ。6回無死一塁では、初球の内角低めスライダーを「直球だと思ったら急に曲がったので、クイっと」。中学時代から入浴中に水圧で鍛えてきた手首の強さを生かして、技ありの右中間場外弾。8回には、ファウルで粘ったあとの内角直球を力強くたたき、右翼ポール際への場外アーチでトドメを刺した。東北大会では10年秋に光星学院(現八戸学院光星)田村龍弘(現ロッテ)が準決勝仙台育英戦で記録して以来。夏の甲子園でも清原和博(PL学園)、平田良介(大阪桐蔭)の2人しかいない偉業を、異なる3投手から放った。

 培ってきた技術や、宮城県大会後にすり足に変えた新フォーム定着も要因の1つだが、最大の原動力は宿敵への闘志だ。7日の今大会開会式。入場行進で先頭を歩いたのが優勝旗を返還した仙台育英・阿部大夢主将(3年)だった。「あのユニホームを見て、闘志に火がつきました。夏に育英とやるまでは負けられない。東北の強豪に勝って自信をつけて育英にも勝って、また甲子園に戻りたいんです」。1年夏に先発フル出場した大舞台は2三振1併殺。リベンジへの最終チャンスを逃すつもりはない。

 2回戦では延長10回サヨナラ本塁打。この日も「この前に計ったら(50メートル)5秒7でした」と言う俊足を飛ばし、けん制悪送球で一塁から一気に三塁へ。遊撃の守備でもダイビングキャッチから二塁封殺するなど走攻守で存在感を示した。「聖光学院は粘り強い。自分も1番打者として1点でも多く絡んで、我慢で負けない」。まずは東北王者奪還で、夏に乗り込むつもりだ。【鎌田直秀】