第100回全国高校野球選手権記念宮城大会(7月14日開幕、楽天生命パーク宮城ほか)の組み合わせ抽選会が25日、仙台市内で行われ、71校67チームの3年生865人が初の試みで参加した。半年間の対外試合禁止の処分が解けた仙台育英は11年ぶりのノーシードで、7月19日の初戦2回戦で気仙沼向洋と対戦する。謹慎期間中は紅白戦で横一線の競争が行われ、20日にベンチ入りメンバーが発表された。阿部大夢主将(3年)を中心に、2年連続の甲子園出場を狙う。

 仙台育英がアナウンスされた瞬間、会場内は一気にヒートアップした。周囲がざわつく中、阿部主将が登壇して気仙沼向洋の隣を引き当てると、堂々と胸を張った。「どこに当たっても、夏の大会は少なからず勝つために相手は準備してくる。自分たちもその準備に勝るよう、準備していきたい。すごい楽しみ」。昨秋の東北大会初戦(10月14日)以来278日ぶりの公式戦に向け、気を引き締めた。

 半年間の謹慎中はひたすら紅白戦を行い、横一線で競った。4月までの紅白戦の成績順に12~13人の4チームに割り振り、5月からは「代表決定戦」を行った。計30試合のリーグ戦で優勝したチームの夏のベンチ入りが確定する仕組みだ。エラーをしたら、泣きだす選手が出てくるほどの緊迫感があった。阿部は「自分のワンプレーで他の選手の運命が左右する。独特の雰囲気だった」と回想した。

 5日の対外試合解禁後は、9日の石川遠征から練習試合を再開した。1月から就任した須江航監督(35)は積極的な走塁をテーマの1つに掲げている。阿部は「先生がやりたい野球を体現できているし、走塁は徹底してやれている」と自信を見せた。履正社(大阪)に勝利するなど、練習試合では14戦10勝2敗2分けと好調を維持している。

 謹慎中、阿部は複雑な胸中を表に出すことなく、主将としてチームを率いてきた。「起こってしまったことには変わりない。育英を応援してくれた人に迷惑をかけたので、申し訳ない気持ちでいっぱいだった」。だからこそ、“自分のため”にという考えを捨てた。「この先、自分たちのために野球をやることはない。こんな不祥事を起こしたのにもかかわらず、夏の出場権を得られるというのは、たくさんの方々のおかげ。その人たちの思いを背負って、戦いたい」。覚悟を決めた男たちの最後の夏が、ついに始まる。【高橋洋平】