みちのく高校球児たちが、さらなる飛躍に挑む。全国一の注目を浴びた大船渡(岩手)の最速163キロ右腕・佐々木朗希投手(18)がプロ野球ロッテ入りするなど、東北から3年連続でドラフト1位が誕生。プロ、社会人、大学、海外留学など、新たな道は多岐にわたる。

春夏連続の八戸学院光星(青森)など甲子園出場7校に加え、主な注目選手353人の進路を紹介する。【取材・構成=野上伸悟、鎌田直秀】

酒田南(山形)の192センチ右腕・渡辺拓海投手(18)は、南東北大学リーグの強豪・東日本国際大(福島)に進学し、プロ入りを目指す。体重100キロを超える愛称ジャンボの巨漢から繰り出す最速144キロのキレある直球が武器。昨秋にはプロ志望届を提出したが指名漏れした悔しさを胸に「4年後のドラフトで指名されるために体づくりをしていきたいし、早くAチームに上がって大学日本一に貢献出来る投手になりたい」と決意した。

2年秋には山形を制し、東北大会8強入りした。だが、昨春と夏は県8強敗退。実力を出し切れなかったのは、右膝のケガも一因だった。18年10月の自主練習中に前十字靱帯(じんたい)を完全断裂。食事制限などで一時117キロあった体重も95キロまで減量。強い負荷をかけられないまま、高校野球生活が終わった。昨年8月に手術。ドラフト当日、巨人ドラフト6位指名された伊藤海斗外野手(18)の喜ぶ姿に、控室で涙をこらえるしか出来なかった。

前を向けたのは同級生らの存在だった。「海斗からも『これでへこたれていたらプロに行けないぞ』と背中を押してもらった。負けていられないと思えました」。リハビリ生活にも張りが加わった。スクワットを中心に、下半身の筋力を強化。さらに伊藤からグラブのプレゼントが届き、「海斗と対戦することも目標になりました」と士気も高まった。手のひら部分に刺しゅうされた「俺に負けるな 逆境こそ覚醒の時」のメッセージ。寒い山形では自粛していた本格的トレーニングも、2月上旬の大学合流と同時に再開した。

「僕の目標は阪神藤川投手の火の玉ストレートです。佐々木朗希くんの160キロもテレビで見てすごいと思う。球速は意識したいが、キレのある160キロを目指したい」。挫折を味わった大きな体を生かし、逆境を成長に変える。

◆渡辺拓海(わたなべ・たくみ)2001年(平13)7月16日生まれ、山形・鶴岡市出身。朝暘四小3年に暘光スポーツ少年団で野球を開始。鶴岡四中では軟式野球部に所属し、中3夏からは鶴岡ドリームスでもプレーして東北4強。酒田南では1年春からベンチ入り。192センチ、102キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄、祖父母。血液型O。