東北北3県で第102回全国高校野球選手権大会(甲子園)中止決定後初の練習試合が行われ、球児たちは各県での代替開催を信じて懸命なプレーを見せた。秋田は11日から部活動を再開しており、今季初戦の花輪は主砲・阿部祐希捕手(3年)のサイクル安打などで39-4と十和田に勝利。岩手、秋田に続き、青森でもこの日から各校が対外試合を開始するなど、少しずつ球音が戻ってきた。

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「4番一塁」阿部藍斗内野手(3年)と「3番捕手」阿部祐が、花輪打線のヒーローだ。「あいと(愛と)ゆうき(勇気)だけが~♪」とアンパンマンならぬ“阿部パンマン”いとこコンビ。主将の藍斗が1犠飛2四死球を含む6打数5安打4打点の活躍を見せれば、祐希も8打数6安打8打点と大暴れ。“阿部パ~ンチ”をさく裂させ、初回に長短9連打で9得点したチームにとって最高の再発進を導いた。

祐希はプロのスカウトも昨年から視線を送る182センチ、84キロの右打ち大型捕手。この日も高校通算11号を放つなど長打力が魅力だ。「20日に甲子園の中止を聞いた時は頭の整理がつかなかったが、代替開催も決まったので、練習試合を含めて対外試合全勝で夏を終えたい」。昨秋は県王者となった能代松陽に敗れて県大会出場を逃した。今冬は広島鈴木誠也外野手(25)の映像などを参考に、バットを少し寝かせた打撃フォームに改造。「大学に進学し、卒業後はプロに行けるような選手になりたい。打撃ももちろんですが、守備でのストップが苦手なので、もっとレベルアップしないと」と将来も見据える。

2人は地元鹿角市出身で幼少期から一緒に遊び、八幡平小時代から同じチームで過ごしてきた。祐希が「何でも相談出来る」と頼りにすれば、藍斗も「自分よりミート力もすごいし、目標にしてきた存在。自分はまだホームランは1本ですが2ケタ打ちたい」と切磋琢磨(せっさたくま)する。藍斗は東日本大震災で人命救助する姿に憧れ、自衛隊入隊を希望。2人で目指してきた甲子園出場の夢は消えたが“阿部ック砲”で秋田県の頂点に挑む。【鎌田直秀】