大阪の夏は、横綱対決で幕を閉じた。準決勝で打ち止めという異例の大会で、昨夏の甲子園王者・履正社が9-3で宿敵・大阪桐蔭を圧倒。府内の夏に限れば、21年ぶりにライバルを倒した。15日には、もう一つの宿命の相手、昨年の春夏甲子園で対戦した星稜(石川)との交流試合が待つ。ラストスパートへ、力強い弾みをつけた。

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軌跡がこの日につながっていた。準決勝が最終戦となった大阪大会最終日。ナイター照明が輝くグラウンドで、履正社ナインの歓喜の声がこだました。岡田龍生監督(59)は目を細める。「秋に負けてから桐蔭に勝つぞという1年だった。今日は子どもたちの力です」。指揮官の言葉に、ナインの総意がにじんだ。

新型コロナウイルス感染拡大で通常の選手権が中止になり、代替の大阪大会も雨天による延期で決勝ができなくなった。それでも準々決勝以降の組み合わせ再抽選で、両校は最終的に同じ枠に。運命に導かれるように、今や全国をリードする2強の対決は今夏も実現。昨秋近畿大会府予選決勝では延長10回の末、6-9で履正社は敗れた。何が足りないのか。昨夏の全国制覇校が「打倒大阪桐蔭」を掲げ、歩んだ1年だった。

関本勇輔捕手(3年)は、昨秋の府決勝で相手エース藤江星河(3年)のチェンジアップに苦戦。「消えた」というその軌道を頭に置きながら、冬の打撃練習で対応力の強化に取り組んだ。この日は1打席目こそ抑えられたが、そのチェンジアップを捉えて4回に中押し打を放った。

今秋ドラフト候補の小深田大地内野手(3年)は長打力と確実性を磨き、6打数4安打と得点機を演出。この日の午前中、昨夏の甲子園メンバーで現阪神井上から「チームのためにやるんだぞ」と激励の連絡をもらった。「やるぞ! って気持ちになりましたね」と主軸の役目を全う。6回まで3失点と踏ん張るエース岩崎峻典(3年)のバックをワンチームで固めた。

宿敵を破るのは、18年秋季大会決勝(5-2)以来。夏は99年2回戦以来21年ぶりの勝ち星。関本は「打倒・桐蔭でやってきて素直に安心しています」と高い壁を乗り越えた。次は聖地の星稜戦。「感謝の気持ちを前面に出してやりたいです」。申し分ない相手が待つ。宿敵に連勝し、完璧なシナリオを仕上げる。【望月千草】