日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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プロ野球キャンプがたけなわの沖縄に県内初の女子硬式野球部が誕生する。4月に創部する南部商(沖縄県島尻郡八重瀬町)校長で、県高野連副会長の仲山久美子は過去に中部商、浦添商で野球部長を務めた。

両校で監督を歴任した神谷嘉宗(現美里工監督)から「高校野球は教育の一環。一緒に子供を育てないか」と促された。当時部長としてベンチ入りするのは珍しいケースで、仲山は「女性なのに、何してるんだ? と、ただのお飾りのようにいわれたくなかった」と振り返った。

商業の専門職を生かして配球、打球方向など統計・分析する「分析チーム」を設置、その資料を基にプレゼンテーションした。「サポーターチーム」を編成するなど、プレーヤー以外にも役割という“ポジション”を与えながら運営した。

少子化、スポーツの多様化で競技人口は減少している。一方、全国高校女子硬式野球連盟の加盟校は、10年の7校から20年は36校まで増加。侍ジャパン女子日本代表はW杯6連覇中、阪神が1月に「阪神タイガースWomen」を設立するなど女子野球には追い風だ。

日本高野連が18年から実施する「高校野球200年構想」に参画した際、現状に違和感を覚えた。

「野球人口は減っていくけど、こんなにたくさん女子選手がいるんだと気づいたのです。この子たちを追っていくと、野球が好きでも中学から高校にいくのは県外、経済的に厳しいと野球をあきらめていきます。わたしも野球が好きで、これはやらなきゃいけないと思いました」

校長3年目の21年、それまで温めてきた女子野球部創部を校内の承認をとりつけた上で本格化させた。2度の入部体験会を開催。遠隔地の沖縄北部、離島から入部する選手のため、近くの一戸建て住宅の2階を借りるなど環境面も整った。

「現時点では12、3人でスタートできるかなと思っています。先の見えない時代ですが、変化にしなやかに対応していくのは、女性特有なものです。男子のように女子も全国で活躍すれば注目が集まります。部活動は教育の一部で、野球を通して挑戦し、リーダーになれば学校の活性化にもつながります。地域に根ざすことも大切です。その成果を進学、就職につなげるサポートをしていきたいですね」

地元・八重瀬町の町の花「マリーゴールド」にちなんでオレンジ色のユニホームを発注。仲山は「沖縄の太陽のように輝いてほしいですね」と手応えを感じている。(敬称略)