今秋ドラフト上位候補で最速151キロを誇る中京大中京(愛知)・畔柳亨丞(くろやなぎ・きょうすけ)投手(3年)が、常総学院(茨城)戦で今大会最速の149キロをマークした。

専大松戸(千葉)戦の完封から中1日で7回110球。複数球団の前で馬力を示し、球数は2試合合計241球に達した。同校のセンバツ通算57勝目は歴代単独最多。東海大菅生(東京)は京都国際を逆転サヨナラで下し、智弁学園(奈良)は広島新庄に快勝。8強が出そろった。

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ついに、剛腕が本性を現した。2回2死。畔柳は7番鳥山への初球、高め速球で空を切らせた。「149」の球速表示に甲子園がざわつく。次も148キロで空振り。3球目149キロは外れた。カーブを交え、外角147キロで見逃し三振。天理・達孝太(3年)が25日にマークした今大会最速を、1キロ更新した。

たった1球で球場の雰囲気を変える。エースの姿だった。鳥山への投球前、捕手加藤の助言が頭をよぎった。「タイミングを取るのが上手で警戒しないといけない打者」。無走者でもクイックで多投するが、鳥山には違う。初球で左足を上げ、間合いを狂わせた。2球目はクイック…。投球術も駆使して、圧倒した。

「鳥山君は雰囲気があって、自分の中でギアを上げないと打たれる気がした。自分の持っているすべてを出したかなと思います」

1回戦の専大松戸戦から中1日。「まだ疲労は抜けていない」。25日は131球。この日は4回で8点リードし、今日28日も連戦の中、7回110球を投げた。高橋源一郎監督(41)は「6回くらいで降板させようかと思いましたが、力が出てきて畔柳も『もう1イニング行きたい』と」と説明。畔柳も言う。

「あそこで降りてしまっては、自分のなかで納得いきませんでした」

勝負根性はすさまじい。父貴宏さん(48)は「どえらい負けず嫌いですから、アイツ」と明かす。幼い頃の話だ。卓球、オセロ、トランプ…。「負けると悔しくて『もう1回やろう』って。勝つまでやろうとするんです」。勝負への執着心を、今は野球場で示す。

センバツの57勝は東邦(愛知)を抜いて歴代最多。畔柳は「絶対に日本一を取れるよう、一戦必勝です」と言った。甲子園で春夏11度優勝の名門校。エースに王者の風格が漂う。【酒井俊作】

◆中京大中京が春単独1位 中京大中京はセンバツ通算57勝目。東邦を上回り、学校別通算勝利の単独1位。