<高校野球埼玉大会:不動岡11-3新座>◇10日◇1回戦◇越谷市民球場

新座(埼玉)は2年ぶりの夏を、目いっぱい戦った。1-11とコールド負け寸前で迎えた5回。2死二塁から原島暖主将(3年)が適時二塁打を放った。「僕は打てる選手ではない。練習を必死にやってきた結果が、つながりました」。5回の危機は脱したが、7回コールド負け。それでも村松英高監督(29)は「技術を超えた部分で打ってくれた」とたたえた。

試合前、原島に1学年上のOBから「頑張れ」とメッセージが届いた。昨年の独自大会は、部内から新型コロナの濃厚接触者が出たため出場を辞退。プレーせぬまま夏が終わった代だった。今年6月に母校を訪れた昨年の主将、小池優心さん(19)は「野球は楽しかった。やっていてよかった」と振り返った。東京学芸大野球部出身の村松監督の熱心な勧誘を受けて入部し、部員3人だけで活動していた時期もあったという。

先輩の思いを受け継いだ今年の3年生を、村松監督は「野球が大好きな野球小僧」と評した。バイトで生活費や部費を捻出している選手が多く、練習は週に2~3日。だから、朝練も寝坊はできない。コツコツためて自分で買ったグラブも、一緒に練習を重ねた仲間も、一生の宝物。原島は「まだやりたかったな」とつぶやいて、球場を後にした。【保坂恭子】