<高校野球山梨大会:身延15-14甲府南>◇14日◇2回戦◇山日YBS球場

甲府はこの日も雷警報。前日も第3試合は5回に入ってノーゲーム。第4試合も順延。開幕日も雨で5試合が順延だった。「今日は予定通りに…」と、そんな心理が働く。

身延と甲府南の第1試合、甲府南が1回表に7点。これは一気に決まるかと妄想が膨らむ。雷が鳴り出す前に少しでも進めたい。しかし、2年ぶりの夏の予選だ。全力球児には通用しない。身延が猛然と反撃。4回までに8点を奪い、逆転した。地力に勝る身延がこのまま行く可能性大。ところが、だ。甲府南が驚異の粘りを発揮した。6回に1点差を、7回には4点差を、9回にも2点差を、3度も追いついた。

もはや大人の打算は全力プレーの前に消し飛んだ。試合を見つめる関係者からこんな声が漏れる。「14-14で、しかもこんなに競った試合、見たことない」。点の取り合いは理屈なしに見入ってしまう。

身延が9回裏、遠藤翼外野手(3年)のサヨナラ打で決めた。前の打者が敬遠され「なめられてるな」と燃えた打席だった。甲府南は守りやすくする作戦をとったが、勝利には届かなかった。

2時間56分。誰もが興奮で上気した顔。「いいもの見せてもらった」。勝った方も、負けた方も戦い抜いた大熱戦。時間を忘れて、空を見上げたらまだ薄曇り。安全な大会が最優先。そしてプレーがかかれば、白黒つくまでとことん戦う。大人は静かに見させてもらいます。【井上真】