夏のマウンドに立つのは、エースだけじゃない! 湯沢翔北が新屋に7回コールド勝ち。19年以来3年ぶりの県8強一番乗りを決めた。

先発の背番号「10」、小南喜一投手(3年)が7回を6安打無失点。初戦で第1シード秋田商を破った立役者となった最速145キロ右腕・武藤栄昇(えいしょう、3年)の快投に大きな刺激をもらい、変化球を中心に1人で投げ切った。

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小南はピンチでも動じない真の強さを発揮した。4-0で迎えた7回無死一、二塁の場面。「絶対に0点で抑えようと思った」。相手7番打者を2球で追い込む。カウント2-2。最後は真っすぐで注文通りの三ゴロ併殺に。後続も三ゴロに打ち取り、この回を無失点で切り抜け、右こぶしを突き上げた。「狙い通りの併殺でした。腕を振っていくことができました」と汗をぬぐった。

立ち上がりは地に足がついていなかった。「観客であったり、ブラスバンドの応援…。いつもとは違う景色に緊張して、ボールが浮いてしまった」。初回1死から2連打で一、三塁と得点圏に走者を置いた。「流れは渡したくなかった」。気持ちを入れ直し、勝負球のフォークでバットの芯を外した。遊ゴロ併殺でこの回を終え、先制点は与えない。序盤のヤマ場を乗り切り「ホッとしました。2回以降は緊張することなく、自分の投球ができた」。

強い覚悟を持って先発の責務を果たした。7回を6安打無失点。3種類の変化球を軸とし、最速130キロ台の直球で緩急を駆使した。奪った三振は「4」。持ち味全開の投球術で打たせて取った。「(湯沢)翔北の投手は(エース武藤)栄昇だけじゃないぞと思って、いけるところまで全力で腕を振った」。秋田商との初戦で完封勝利をマークしたエース武藤(栄昇)の姿が、自らを鼓舞する発奮材料になった。

春夏通じて初の夢舞台へ、あと3勝に迫った。「投手陣全員で0点に抑えて、チーム一丸で戦う」。夏は負けたら終わり。背番号に関係なく、投手陣が強固なスクラムを組み、頂点への原動力になる。【佐藤究】