20年7月の熊本豪雨で甚大な被害を受けた県立の八代清流が、3回戦進出を決めた。ルーテル学院に5-4と辛勝。1-0の3回無死二塁で貴重な左前適時打を放った主将の筒井健太外野手(3年)は「1回戦ではチームに迷惑をかけた。ここで1本打たないとみんなの信頼を失うな、と。強い気持ちで打ちました」と胸をなでおろした。

筒井らが1年生だった2年前に、熊本県は記録的な大雨に見舞われた。校舎近くを流れる球磨川が氾濫し、学校全体が浸水。球場も使えず、水を取り除いてもフナ、コイ、マムシなどの死骸が散乱していた。「グラウンドは使えず、学校にも行けなくて、友達にも会えなくて…」。当時を回顧すると胸は痛む。完全復旧には約3カ月もかかったが、一方で得た経験も大きかった。筒井は「普通に練習ができることのありがたさを感じました。『当たり前ではなかったんだな』と、今は思っています」と言う。

勝利後は、演歌歌手で地元八代市出身の八代亜紀(71)が作詞・作曲した校歌を合唱した。昨夏は同校初の初戦突破から、ベスト8まで躍進。筒井は「熊本の頂点を取って、甲子園で1勝したい」と強く意気込んだ。【只松憲】