秋田中央が湯沢翔北との緊迫した投手戦を2-1で制し、4強一番乗りを決めた。先発したエース右腕、土田温人投手(3年)が9回116球を投じ、8安打1失点の完投勝ち。序盤は球が浮ついて苦しんだが、指揮官のボヤキに奮起。粘りのある投球で再三のピンチを切り抜けた。ノーシードから19年以来3年ぶりの聖地へ、あと2勝に迫った。次戦は19日、能代松陽と大曲農の勝者と激突する。

秋田中央の背番号「1」、土田がマウンドでほえた。9回2死一、二塁。点差はわずか1点。一打出ればサヨナラ負けの局面。最後のヤマ場を迎えた。「1球でも甘く入れば持っていかれる」。カウント1ボールからの2球目。内角胸元へカットボールを投じ、力のない打球が左翼へ上がった。最後の打者を左飛に打ち取り、右こぶしをグッと力強く握った。9回を1失点完投。4強進出の立役者となった。

「1個ずつアウトを取ることを心がけた。粘りある投球ができたと思う」

耐えしのぎ、マウンドを譲らなかった。立ち上がりから制球がばらつく。球は上ずり、思ったところへボールがいかない。「肩の調子は良かったけど…」。初回からいきなり1死満塁のピンチを招いた。後続を投ゴロでホーム併殺に打ち取るも、続く2、3回も得点圏に走者を背負った。3者凡退は3イニングだけ。「球が浮いてしまった」。それでも、要所では相手打者の低めを突いた。再三の窮地にも、5回の1失点だけと大崩れはしなかった。

ベンチで戦況を見守った勝田慎監督のボヤキが、エースの尻に火をつけた。

「いつになったらボールが低めに集まるんだ」

2回までに3四死球を与えるなど、ピリッとしない姿に本音が漏れた。

土田は「言われて当然の内容です」と受け止めたが「(監督のボヤキに)『見ておけよ』と」心の中でつぶやき、6回以降は3安打無四死球。試合中は小言でげきを飛ばした指揮官だったが、試合後は土田の力投をたたえた。「試合を壊さず、ゲームをつくってくれた。土田らしい良い投球だった」。

甲子園切符が懸かった、秋田「夏の陣」もいよいよ大詰めを迎える。「やっていくことは変わらない。1球1球全力で、1戦1戦を戦っていきたい」と土田は足元を見つめた。19年以来3年ぶりの頂点まで、あと2勝。まずはセミファイナルを突破する。【佐藤究】